複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.322 )
- 日時: 2013/03/10 17:51
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: JbG8aaI6)
60・She is a mental important point.
『ルールは簡単』
雷暝の声音は怖いくらいに落ち着いている。俺たちもちゃんと落ち着いている。
大丈夫だ。何度この言葉を自分の中に響かせただろう。
何度いっても変わらない。大丈夫なのだ。
カーネイジ・マーマンもいる。側に居てくれる。
クオに会いに行こう。これが終わったら。会いに行かないと。俺には守るものができたって伝えに行こう。
凪にも会いに行って、それでアイツがいいって言ったらアイツも一緒に旅をしよう。
何をするわけでも、何を探すわけでも無い。目的が無くたっていいじゃないか。それで良いじゃないか。
それでいいって思うことができる。大丈夫だ。
凪が良いって言ったら、なんて。俺はもうアイツを認めてしまっているな。前までの俺だったら、アイツは俺たちと来たいっていうはずだって勝手に決めつけていただろうから。
変わったんだ。変わることができた。
俺は弱虫で、まだまだ小さい存在だけど。大丈夫だ。
『今、ロムに運ばせた腕輪があると思う』
直後、俺たちが入って来た扉が開いてロムが現れた。先ほどまで赤女たちの側に居たのに。
彼女は六人分の腕輪を持っていた。それを差し出してきたので、俺は恐る恐る確認しながらそれを手に取った。
真っ赤な腕輪だった。金色の装飾がまるで魔法陣のように施されたもので、なかなかセンスが良い。
しかし俺は赤色が嫌いだから。俺の髪と言い目といい、赤色を美しいと思ったことは一度だって無い。
アスラをちらりと見ると、眉を潜めてその色を見つめていた。
赤女の命を狙っているはずのアスラは、俺たちの手伝いをしてくれた。凪の時に混乱していた俺たちを助けてくれた。
信用しきっているわけじゃ無い。でも嫌いじゃない。今ここに赤女は居ない。コイツはもしかしたら赤女を自分の手で直接殺したいのかもしれない。
そうなら、戦うことになる。
赤女は人を殺せない。確信している。あんなビビりでバカな奴に、人の恨みを背負うことができるはずがないのだ。
『それを奪うか、相手を殺した方が勝ちだ』
実に簡単なルールだった。
簡単に、赤女のことを左右させる。浮かんで来る怒りを抑えつけたのは多分、俺だけじゃない。ムーヴィも達羅も、きっと騒ぎたいほどに怒りを感じただろう。
彼女の言葉がなければ。
「じゃあ、十二個になるのね」
アシュリーの言葉の意図は誰も殺さずに腕輪だけで勝利するということだ。
彼女の言葉に笑ったのはジャルドだった。
「そうだなぁ。じゃあ、アシュリーとカンコは抜きでやることになるな」
〜つづく〜
六十話目です。