複雑・ファジー小説

Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.325 )
日時: 2013/03/15 21:09
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: JbG8aaI6)



63・Change is taking advantage of a small thing.


「ロム、お疲れ」

大したこともしていないのに、ソウガは私のことをほめてくれる。私の肩を心配してくれたし、それに頭を撫でてくれる。
ソウガは私に特別な感情を抱いて居るわけじゃないと思う。
ただ、ここまで生き残って来た者同士、ということだけだろう。
嬉しかった。ソウガと一緒に生き延びることができたこと。それが私だけの実力じゃなくても。それが、ヒダリが居なければ成し遂げられなかったことだとしても。けど、嬉しいんだ。

ソウガの右耳のピアスが証明して居るように、彼は男しか愛せない人間なのだ。人には必ず弱点や弱みがある。私もあるし、きっとガーディアンだってレジルだってヒダリだってあるに違いない。
でも、雷暝様には感じないのだ。彼の弱みは一体なんなのだろうか。
感じ取ることが、予想することができない。それを見つけることができないから、私は彼を恐れそして側に居るのかもしれない。
絶対的な存在だと考えているのだろう。

「ソウガ、ちょっと訊いても良い?」

「何?」

私が問いかけても彼は嫌な顔を作らない。
私はどんな存在なのだろう。ただの女かな。取るに足らない存在かな。それでもいいと感じている。
特別になりたくない。なったら、失うのが怖い。ソウガは強いけど何時負けるか分からないから。それでもしもソウガが負けて、雷暝様に殺されるような事になったら私は耐えられないだろうから。
おかしいな。なんで、なんで私は、未来の想像から雷暝様を消すことが出来ないのだろうか。彼の掌の中から抜け出す気がないのか。
私は、どうしたいのだろう。
ただ生きたいって、それだけを考えていた時とは違う。明確な目標が、目的が欲しい。
こんなの要らない。欲しちゃいけない。そう思っていたのに。
なんで私は。

「貴方は何のために戦っているの?」

あぁ、あの女。雪羽。赤い女。間抜けた顔をして、でもまっすぐで。バカで、自信はなさそうなくせに、仲間を大切にして。自己嫌悪に呑まれそうになりながらも、必死に空を見上げている女。
気に入らない。私、今、アイツみたいなこと言っていないか。よけいなことを考えたらいけないって。

質問を取り消そうとしたのに、やけにソウガが真剣な顔をするから言葉を飲んでしまった。

「……レジルといい、ガーディアンといい、なんか変じゃない?」

口をぽかんとあけてしまった。
レジルも同じような質問をしたのか。
もしかして、雪羽にあったから。あの女、本当に何者なんだ。

「あーなんでもない。さ、行こう? もうすぐ始まるし」


〜つづく〜


六十三話目です。
277話です。ちょっとメモしておかないと忘れるのでごめんなさい。