複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.327 )
- 日時: 2013/03/19 21:12
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: JbG8aaI6)
65・Thinking analysis, failure.
カンコを戦わせるわけにはいかない。彼女は俺にとって確かに一番大切で、一番愛している人物だ。
雷暝と言う男に春海のことを出された時は、心臓をわしづかみにされたような衝撃を受け、狼狽えてしまいそうになった。
すぐに声を上げて燕が言葉を止めてくれなかったら、俺は精神がガタついてしまって戦いどころではなかったと思う。
認めなければ、聞かなければ、存在を忘れてしまえば、目をそむければ。そうしていれば、大丈夫なのだ。
アイツは、春海は俺とカンコを縛り続ける。遠くで俺たちを縛り続ける。掌の上で踊っている過ぎない俺たちは、大きな世界を見ているような気分になっている。
それは違う。
俺たちが歩んでいるのは、見ている世界は、春海が用意した玩具でしかない。狭い世界を俺たちが喜んで歩き回って自由だと錯覚しているのが、春海には面白くして仕方がないのだろう。
俺たち二人はそれが分かっているのに、認めようとしない。真実の自由を探している。
その点は、カーネイジ・マーマンの連中と似ていると思う。
大切な、大切なカンコ。
俺と痛みとかりそめの自由を共有しているカンコ。友に傷ついているカンコ。
そのカンコを飛行船から突き落とし、危険にさらした二人組、ヒダリとロム。
許さない。
できるなら同じ目に合わせたい。
そう思っていたのに、ハラダ・ファン・ゴの警護を頼まれていた時に世話になったアスラが名乗りを上げた。
この男をカンコは警戒している。
今だって嫌な感じは失っていない。でも前よりはましになって、近寄りやすくはなっているかもしれない。
「……悪いか」
アスラが眉をゆがめる。
不気味な雰囲気の彼とはできれば関わりたくないと思っていた。でも雪羽嬢を助けたいと口にしたコイツを、ライアーは信じることにしたから。
ライアーが信じるからと言って俺が信じるわけではない。
空気。この男を空気として扱おうと思っていたのに。
「……別に、大丈夫だけど。俺のこと邪魔するなよ?」
今は市場で争っている場合じゃない。
その位、長年紳士の皮をかぶってきた俺なら容易にわかることだ。
俺とアスラの会話を不安そうに見ていたライアーがほっとした表情になる。
しかし、まだ不安は残っているようで決して俺とアスラから目を離すことはしなかった。
「二人で大丈夫か?」
『あぁ、問題は無いよ。三人なら問題だが』
突然会話に入り込んできたのは雷暝。
相手が二人ならばこちらも二人。しかし、ロムは戦力になるのだろうか。
息が合うかもわからないアスラと二人で応戦することにかなり不安を感じる。この中で息が合う人物と言えば、ライアーしかいない。
でも。
でもコイツは今戦うべきじゃない。
俺は歩きだした。アスラも歩き出した。
会話は無かった。
〜つづく〜
六十五話目です。
カクサンキボウ。で泣いてしまいましたーあのゲームは本当によかったですね、ただのホラーだけじゃなかったです。