複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.329 )
- 日時: 2013/03/22 14:34
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: JbG8aaI6)
67・Meaningless existence proof.
妙な団結感と、人を信頼する目。慣れない空気だった。まるで主人の側に居るかのようだった。
あの赤髪の男は、主人じゃない。この世界にもう主人は居ない。あの女が殺したから。
俺の主人は殺された。当の昔に殺された。
主人の願いを俺は叶える。叶えて見せる。最後まで主人が願ったことを、俺は。
上司の人。ハラダ・ファン・ゴでお世話になった人。俺なんかのことを気にかけてくれた人。唯一の人。俺を見てくれた人。
どうでもよかった。俺は主人の願いを叶えれば、それでいいと思っていたんだ。俺のことなんてどうでも良いってそう思っていたのに。
いけない感情かもしれない。俺の存在意義なんて要らないって。成長なのか、退化なのか。
こんなことすら考えることは余分だ。
俺が、生長するわけがない。俺に道は無い。
俺は自分の口で自分の名前を言った。
「『アスラ』」
主人。分かっている。俺の使命は、二度と赤い時代を起こさせない事。世界を、壊させないこと。
わかっている。わかっているんだ、主人。
俺は変われない。俺は、主人の物だ。手なんだ。右手まではいかないかもしれない。でも確かに手だから。
俺は道具でしかないから。
だから、なのか。
向こう側に立つ二人を見ていると、自分の姿が揺らぐ。
茶髪と、深い青い瞳。右目の十字線。右耳から垂れ長ったコードと、右頬のむき出しの鉄板。
ロムとヒダリの二人は雷暝に踊らされている。
自分がここに居る意味を追及する手段を失い、ただ意味もなく息をするために戦い、人を殺し、そしてゆっくりと自分を殺していく。
なぁ、そこまでして。
なんで人間って生きようとするんだ?
辛いならやめればいいのに、いろんな事を。考えることとか、自分を追い詰める事とか、全部全部。
俺はそうしている。いやなことから逃げている。逃げても始まらないってことは分かっているけど。
結局、どうでも良いって言いながらも自分が大切なのか。
違う。
主人が大切にしていた願いを大切にしている自分が、大切なんだ。
自分にもしも目的が無かったら、俺はきっと俺のことを殺して居る。
もしも、誰も赤い時代を復活させようとしなくなったら。
そうしたら、俺はどうすればいいんだ。俺が居る意味が。
考えるのを、やめた。
隣に立って居るジャルドという男の考えている事は大体見当がつく。
俺とは息が合わない。そう思っているはずだ。
俺もそう思う。俺とコイツが息ぴったりだったら逆に気味が悪い。
馴れないコンビネーションに期待するより、自由に個人で戦った方がいいだろう。コイツだってそう思っているはずだ。コイツは頭がいいはずだから。
円型でろくに隠れる場所もない。
真っ向勝負。二対二。命がけ。腕輪なんて狙わない。
命。
命だけ。
『それでは、第一回戦を始めようか』
〜つづく〜
六十七話目です。
対して考えもせずに来てしまったー避けられないですねー。