複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.331 )
- 日時: 2013/03/23 12:40
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: JbG8aaI6)
69・It does not lose, if what is protected is the same.
私に世界を変えるほどの力があるなんて信じられない。雷暝はきっと幻想を見ているんだ。ロマンチストなのかもしれない。
それに、なんで世界を変える必要があるんだ。
ビーストが居て、人はそれを利用したり倒したりして、日常の一部に埋め込んでそれなりに良い生活を送っているじゃないか。
麻薬とか、人種差別とか、まだまだいろんな問題があるかもしれない。つまり、その問題を一気に解決すると言うことだろうか。
いや、逆か。
雷暝は世界をいい方に変えるんじゃなくて、悪い方に変えようとしているのかもしれない。だとしたら止めないといけない。
私で世界がいい方に変わるとしても、私はそれを望まない。他力本願な言葉で最低だが、きっといつか誰かが何とかしてくれる。
世界の闇は一生消えない。
人が居る限り、人の欲望があるのだから闇は消えることがない。
楽になりたい、嫌な感情を殺したい、自分が価値のある人間だと思いたい。そんな欲望が渦巻き続けているから麻薬とかが蔓延るんだ。
変える事なんか出来ない。人が居なくならない限り。
人が、居なくなる。
レッドエイジ。
なんで、クイーン・ノーベルは私にネックレスをくれたんだろう。
どうして、私にレッドエイジを知っているかどうか、聞いたんだろう。
私の知らないところで、世界は変わろうとしているのかもしれない。
それに私が関与しているのかもしれない。
有り得ない。そう言い切ってしまえるはずなのに。
私は拳を握りしめた。
知りたい事がたくさんある。
ライアーの意思とか、自分の価値とか。大きいことから小さいことまで。
ここに居たら何も知れない。
だから助けてほしい。
戦いの合図で私は身を乗り出した。
ジャルドとアスラ。
私を助けようとしてくれるなんて、思ってもみなかった。
必ず、勝ってくれる。
+ + + +
ヒダリは迷わず二人に突っ込んでいった。
はずだった。
正確にはひとりしかとらえることができなかった。
戦いの合図が放たれたとたんに、アスラはすぐにジャルドから距離を取ったのだ。
ヒダリに考える脳は無い。
ざっと目分量で距離を計算してヒダリは近い方のジャルドに攻撃を仕掛けた。
ガラ空きになったのは私。そんな私にアスラが近づいて来る。
片手で魔術に必要な物を腰のポケットから取り出す。
何個かおとしたけれど気にしない。焦っているのかもしれない、とか考えない。
「汝yo我nokoeni答eyo」
ずるりと、変な音がした。
頭の裏側、脳みそに近い辺り。
ろくに精神を集中させずに詠唱を始めたからだろう。アンダープラネッターが私を引きずり落とそうとしているんだ。
私は指先に精神を集中させる。喉の奥から息をつめて、熱のある空気を織り込むように声を発する。
アンダープラネッターに落とされるつもりはない。
「我汝no力wo望munnetuno心臓wohiki裂ku刃wo」
〜つづく〜
六十九話目です。