複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.332 )
- 日時: 2013/03/25 15:37
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: JbG8aaI6)
70・Brains for 2 persons.
アンダープラネッターはそれぞれ属性を司っている。
氷、炎、風、闇、光、時。他にもさまざまな種類があり、まだ解明されていない種類もある。
アンダープラネットからアンダープラネッターを引きずり出す魔術はすでに人が使えることが召喚魔術として解明されているが、人自体がアンダープラネットにたどり着くことはできていない。
まだ解明されていないアンダープラネッターの種類があるのは、そのアンダープラネットに問いかける言葉が分かっていないからだ。
それを解明するのは世界の魔術師たちだけだと思っているかもしれない。だが、科学者たちもアンダープラネットの研究に身を乗り出し始めている。
科学と魔術により、新たなる世界、未だに謎が多いもう一つの世界であるアンダープラネットが明らかにされそうになっているのだ。
「『雹結』————貫氷空」
右目の熱が奪われたようだ。
冷たさが痛みとなり、そして痺れと化す。
喉の奥から凍りついていくような感覚が襲ってくる。
アンダープラネッターを呼ぶときには注意が必要だ。
レベルがある。私がいま力を貸してもらうために呼び寄せたのは雹結という氷を司るアンダープラネッターだ。
氷を司るものは他にも立花というものが居る。
だが彼女、というべきなのか。立花は性格が穏やかで、人間に危害を加えることは無い。初心者でも呼び出しやすく、魔力の少ない者でも扱いやすい。
しかし、彼は違う。
雹結はプライドが高く、自分よりも格下の者に使われる事を嫌う。だからあくまで、魔術を使う私たち人間は、雹結に使われる道具なのだと彼に意思表示しなくてはいけない。
彼が今、私を試そうとしている。
感覚を持っていかれそうだ。頭の中に液体が満たされたように、考え事が追い付かない。目を閉じてしまいそうになるほど、視界が歪む。
だが私は負けるわけにはいかない。ここで、死ぬわけにはいかない。
「っあぁぁああぁあああ!!」
動かなくなりそうな右腕を無理矢理にふるう。
指先から広がっていた銀色の氷が、空中へとはがれていく。美しいその光景に見とれているほど余裕はない。
放たれた氷の粒が瞬時に空気を凍らせ、埃を取り込み、体積を増していく。いくつもの鋭い槍状になった氷は、私の手の動きに合わせて浮遊している。
何度か使ったことのある魔術。失敗は許されない。油断はしない。
一歩だけ両足で後ろに飛びのき、向ってくるアスラに向かって右腕を大きくふるった。
自分の体を縛りつけていた氷がすべて、恐れを知らない彼に牙を向いた。
私はそれを見届けることなくヒダリに視線を向けた。
彼の分の攻撃も考えて、指示をしないと。今のはあくまでアスラの足を止めるものでしかない。
〜つづく〜
七十話目です。
意外と楽しいですね、戦闘描写。