複雑・ファジー小説

Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.333 )
日時: 2013/04/28 17:19
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: JbG8aaI6)


71・The breakthrough which the machine showed.


雹結の力を借りるとは思わなかった。奴は扱い辛い。その代わり強力な魔力を発揮する。
この魔術をまともに食らったら体を貫かれる。俺の直感だった。弾くこともできない。
俺が使う武器と言えば自分の体のみだ。
右目のメモリが動く。ロムの間の魔力が上がっていく。次の魔術を準備している。ということは、この魔術を連続で使うことはできないらしい。
雹結程のアンダープラネッターを連続で使うとなると、危険性が高まる。クイーン・ノーベルならばできるかもしれないが、この女にはできない。いつか、つぶれる。アンダープラネッターに呼びかけるほどの時間を与えなければいいのだ。
七本。避けられないわけじゃない。
重心を低くするが、バランスがとり辛い。
追尾する魔術はついていない。倒れこむように前転する。
ジャルドのところまではもたない。

「しつこいっ!」

右目のメモリが激しく点滅した。後ろで声が聞こえた。そして、背後で風を切る音がした。振り返ることもできなかった。
何が起こったのかわからなかった。ただ、ロムの左手が何かをはじいたのは分かった。
咄嗟に、体を右に投げていた。腹の中心を狙ったらしい鋭利な物は左わきを貫いた。
衝撃で前の傷が開いたのか前の生地に血がにじんでくる。よろけてしまいそうになったが、踏ん張った。右に体を倒しながら振り返ると、冷酷な赤の瞳が俺を見下ろしていた。
何時の間にジャルドを振り切ったんだ。脂汗が額から垂れてくる。

「ふざんけんなよっ!」

追いかけてきたジャルドが抜いた刀はヒダリの首をとらえる。俺はそれに構わず女に走る。
すぐに女の方に視線を戻してもそこに女は居なかった。


 + + + +


速かった。俺が前に居ることが見えていないかのように。
女が左手を弾いたのに反応をした。背後に居たはずの女の合図らしきものに確かに反応したヒダリは、まっすぐに女の攻撃を避けたアスラに向かってナイフを叩きこんだ。
アスラは傷を負っていたはずだ。さらにまた怪我を負った。俺のミスだ。
自分への怒りをも込め、刀を振り下ろした。ヒダリは赤い瞳を俺に少しだけ向けて左手で首を保護した。
それに不自然さを覚える。
それだけ、なのだ。
ただ自分の首を守っただけでそれ以上は何もしてこない。だからすぐに繰り出した俺の左足にこいつは反応しなかった。
まるで、それ以上の行動を考えていないかのように。

「っあぁ!!」

ほとんど捨て身だった。次の行動の分のバランスは全く考えていなかった。
でも確信だった。
ヒダリは、動かない。


〜つづく〜


七十一話目です。
やっぱり難しいがな。
大河元気くんと結婚しなくちゃいけないので駄目ですなー。(?)