複雑・ファジー小説

Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.350 )
日時: 2013/04/09 22:28
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: JbG8aaI6)
参照: http://296



84・Mutual reliance.


質問に答えられない自分を情けないとは思わない。
孤独の意味は分かる。分かっているつもりでいるだけで、その真実は知らないのかもしれない。
俺の知識は一体どこまでなのか。そんなことに興味も抱かないのだ。俺はただ、主人の願いと無念のことしか考えていない。そのための知識と興味と感情しか抱かないつもりだった。でも本当は違うのかもしれない。俺は俺が思っている以上に、何かについて感情を抱いたり、考えたりしているのかもしれない。
俺はこのままでいいのか。実を言うと、その先のことは考えていないのだ。無念を晴らして、主人の願いを叶えてそれで、どうする。その先は。俺のゴールは一体どこなんだ。
とはいっても、そのどちらも叶えていない状況、しかも願いをかなえることすら危うい今考えるべきことじゃない。

孤独には慣れていない。
主人が居た。俺の側には主人が居た。というより、俺は主人の側に居たのだ。ずっと居た。ずっとずっと、居ると思っていた。
それは叶わなかった。主人の願いは俺の無念。俺の願いが途絶えた瞬間。

「あるかもしれない。だが覚悟はしていたんだ」

いつか主人が居なくなり自分が一人になる事。
俺は今だって一人だ。あのレッドライアーが聞いたら拙い言葉を使って、感情を表にはしないが俺は一人じゃ無いというだろう。それで照れくさそうに俺が居るとかいうのだろうな。
アイツはそういう男だ。短い付き合いでそう感じた。アイツは変わってきている。最初にハラダ・ファン・ゴで出会った時よりも、強くなりそして弱くなっている。
感情を知り、自分の欲を知って、変動した。もっと冷酷で自己中心的な思考しか持たない男だったと思って居たのだが。

俺の話を聞きながらもロムは攻撃を止めない。体に赤い線が走り、そして俺は避ける事しか術がなくなってきていた。
体力的にも限界かもしれない。しかもロムのスピードは加速していっている。
リインフォースで消耗した自分のエネルギーの回復を待っている暇はない。

「ヒダリが負けると思うか」

次は俺の質問だった。
離しながらでも戦えるという状況は好ましいかもしれない。落ち付ける。心に余裕が持てる。舌をかむことが無ければ大丈夫だ。

ロムが振るって飛ばした氷の粒手を薙ぎ払って、姿勢を低くする。一気に落して足払いを掛けたがよこに飛ばれて避けられた。

「思わないな」

「俺はジャルドが負けるとは思えないんだ」

言っていて恥ずかしくなった。
俺は確かにあの男のことを信じているのだろうな。


〜つづく〜


八十四話目です。
あと四話ですね。