複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.354 )
- 日時: 2013/04/14 10:43
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: JbG8aaI6)
88・Her world is not finished.
自分の右腕から腕輪が抜けていく。
首が痛い。目が痛い。右腕が、心臓が、何もかもが痛い。左腕から氷が消え失せて、冷気が抜けて、高ぶりが消えていく。
終わったんだ。私は負けた。しかも、腕輪を取るという方法で。アスラは殺してはくれなかった。悔しい。終わってしまった。
ガーディアン。レジル。ソウガ。ヒダリ。
ごめん。ごめんなさい。
アスラが私の上から身を起こした。
私は動けないでいた。涙で目の前が見えない。情けないとか考えていられなかった。
『ガーディアン』
声が聞こえる。アスラが驚いている。
何度も見てきた光景だった。私も、いつもは上の立場だったのに。いつまでたっても、彼はやってこない。
中性的な顔立ちをして、どこまでも純粋な彼はやってこない。きっと躊躇っているんだ。
ここまで来て、私も怖いよ。
死ぬのは怖いよ。居なくなるは怖いよ。忘れられるのは怖いよ。何もかも怖いよ。
死にたくないよ。死にたくない。
嗚咽が漏れる。
「な、んだよ」
アスラの押し殺したような声。
『君は知らないだろうから教えてあげようか。敗者は死ぬんだよ』
「……は?」
アスラの純粋な疑問の声。
そして足音。現れる顔。手を伸ばそうと思った。できなかった。現れたのは、あの桃色の瞳の子じゃない。
マリンブルーだった。
美しい顔をしている。右耳のみの赤いピアスがきれいだ。
きれいだよ、ソウガ。きれいだ。きっと世界は貴方を批判するだろうけど。拒絶するだろうけど。でも貴方はきれいだ。汚くて負けてしまった私がそんなこと言うのはなんだけど。
なんでか、笑いそうになった。涙で滲んでいて見えないのがもったいないな。ソウガの顔、もっとじっくりと見たかった。見ておけばよかった。
後悔ばかりだ。
これからみんなどうなるの。私が居なくなったらどうなるの。
「……ロム」
静かな声だ。静かな声だった。水面を揺らすような声だ。
ソウガが私を見下ろしている。名前を呼んでくれている。
口角が上がってきた。そんな私を見てソウガが切なそうな顔を作った。
なんでそんな顔をするの。貴方は最後まで負けていけないの。負けるわけないけど。私のように、失敗はしないと思うけど。
ソウガの銀色が天に輝いた。
殺してくれるんだ。ソウガが、私を。
「ソウガ、——————」
小さくつぶやいた言葉はきっと、彼に届いたと思う。
私は、ここに来る前のことをしっかり憶えているんだ。でもここでのことが大きすぎた。悲しみも寂しさも、全部全部、大きすぎた。
私が居なくなることで、みんな背負う量が多くなるんじゃないかな。
みんな、元気でね。
愛してる。
愛しています。雷暝様。
あいして、
〜つづく〜
八十八話目です。
【報告】
今回で300話突破です!
気が付けば六章が五章を超えていまして、しかも多分六章だけで百話超えると思いますのでまだまだお付き合いお願いします。
今回で一人死亡ということなんですけれども、人が死ぬシーンは何度書いても面白いですね。
一体いつになったら完結するんだって言う話なんですけど、今年には終わらせられると良いなって思っています。七章の話も決まっているので多分問題なく更新できると思います。
ではこれからもまだまだお世話になると思います。よろしくお願いします……(*´ω`*)