複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。【300話突破】 ( No.359 )
- 日時: 2013/04/24 22:27
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: JbG8aaI6)
93・A habit and the memory.
空の青色とは違う、もっと深い色。その瞳でドラゴンを見上げるアスラ。
ふざけるな。そんなことはわかっている。
唾を吐く。ほんのりと血の味がした。
アスラの精神状態は、どうやら結構普通のようだ。もっとショックを受けているのかと思っていたのだが。
殺さないとは意外だった。もっと思い切って、あんな女よりも確実な勝ちを優先すると思っていたのに。
アスラはロムの腕からとった腕輪を自分の右腕につけた。自分の物と当たって小さく金属音がした。
気を使ったのは間違いじゃなかった。ああいう時、すぐに状況を整理させてあげないと、人は変になる。少なくとも、アスラにはまだ壊れるだけの人間性がある。俺はそう思う。
ヒダリを見ていてわかったこと。人間として存在するためには、理性と自我が必要だということだ。
自分で考えず、指示だけで行動していたヒダリを人間として見る事なんかできなかった。
今は違う。きっとヒダリは今から、自分で考えて行動する。ヒダリとしてではなく、雷暝の道具として。力を解放したドラゴンとして。
「さぁて。どうするよ、軍曹様」
少しだけ前に歩を進めたアスラが振り返って、眉を潜めた。自分の唇も変な風に歪んでいる。
軍曹様って、なんだ。
良くわからないうちに、懐かしい言葉を口にしていた。
自分の唇を指で触れる。かさついていて、切れているみたいだ。血は乾いているようで、指に付着することは無かった。
少しだけ笑ってごまかすと、アスラは肩をすくめてドラゴンを見据えた。
軍曹様、か。
いやだいやだ。まだあのときのことが抜けていないなんて。カンコを抱きしめたい。早く、抱きしめたい。
「俺が斬る。だからお前は下でサポート。お前が何ができるかよく知らない。勝手に死なないようにしていろ」
アスラの判断は間違えていない。立派な軍曹様だ。とはいっても、これ以外に方法は無いし、この程度なら俺でも計画できる。
ここからだ。実現できるか。相手はもう人間じゃ無い。人間の形だったころのあの速さをこの巨躯で保っているならかなりの脅威だ。
自分で考える力も備えて、攻撃パターンが読めず、声も発さない。ビーストよりも知性のある獣。
どうする。わからない。どう動けばいい。こう考えているのはアスラも同じに違いない。
迷っている暇はない。行動しないと。こんなにうじうじしていちゃあ、まるでライアーだ。
アイツ、雪羽嬢と会って変わったな。
迷うことを覚えた。自分の選択の重みを知った。
「死ぬなよ、アスラ」
〜つづく〜
九十三話目です。
進撃の巨人を読みました。へいちょかっこいい。へいちょ私も蹴ってください。