複雑・ファジー小説

Re: 赤が世界を染める、その時は。【300話突破】 ( No.363 )
日時: 2013/04/29 13:05
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: JbG8aaI6)



97・Those who know reddishness.


ずっと昔の話になってしまった。マスターと俺が出会った時はすごく昔に。
知っている人だって限られるようになって、レッドエイジの真の恐ろしさを知っている人間はもう多くない。
世界を変えた時代として崇拝する人間が出てきてしまった。知らないからそんなことがいえる。そんな幻想を簡単に抱ける。あの時代を知っている者ならだれもが口を揃えてあの時代はもう起こしてはならないというだろう。

警戒はとかない。
ドラゴンの姿の奥に赤女がいる。助けるわけじゃ無い。赤女があそこにいると不都合があるから。このままではいけない
。俺も形は違うけれど、赤の時代に捕らわれているのかもしれないから。あくまで俺はマスターの願いをかなえるためにいる。
時代のためじゃなくて、マスターが守ろうとした世界のために。

「……悪い」

判断力がなくなっていた。
ジャルドは何も言わない。

どうすればいいんだ。
とりあえず、腕を斬る。それの他に方法は無い。
あの大きさだ、小回りは聞かない。ならば早さを発揮することはできない。剣などの道具も使えない。喋れないなら魔術を使うこともできない。
思っているほど脅威ではない。そう思いたい。

服を引き上げて鼻の頭の汗をぬぐった。
暑い。
極度の緊張状態がずっと続いている。
自分の汗にさえ気を取られそうだ。
気温じゃない。自分自身の体温が上がっている。急激に。ジャルドは涼しそうだ。
リインフォースの反動。自分の力の限界を超える技。暗示に近いもの。俺が得意としている技。
これを出してもまだ戦いは終わっていない。油断してはいいけない。
分かっているのに、つい考えがそれる。
集中しろ。
くそ。これだからうまく魔術を習得すことができないのだ。
俺は何時まで経っても自分の可能性を広げることができない。
このままでは、いけない。

そうでしょう、マスター。

『そうか、茶髪の君、アスラはレッドエイジに生きていたのだな』

声に反応してかドラゴンの呼吸音が少し小さくなった。
会場は静まり返っている。
俺たちの戦いを見ている人間が多くいることを実感して妙な気分になった。

「……それがどうかしたか」

『いや、少し俺の知り合いに顔の広い奴が居てね。そいつに頼んだら君についての情報をくれたんだ』

眉間に皺が寄った。

俺についての情報を知っている人間が居たのか。いったいどうやって俺のことを知ったんだ。ということは自然にマスターのことについて知っていることになる。
レッドエイジの真相を、知っているかもしれない。赤い赤いあの時代のすべてを知っているのかもしれない。
それなら。
それなら、マスターが死んだときのことを詳しく知っているのかもしれない。

「それは、誰だ」


〜つづく〜


九十七話目です。
カキコのフォントまた変わりました?