複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。【300話突破】 ( No.373 )
- 日時: 2013/05/21 21:19
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: ae8EVJ5z)
107・Blood in which the pure man became dirty.
分からねぇよ。なんで、死んだんだよ。なんで、殺さなくちゃいけないんだ。なんで、殺されなくちゃいけないんだ。
ただ、少しだけ考え方が違くて、そして敵になってしまっただけだ。あいつら個人個人に何か恨みがあるわけでも無いのに。
尊いかどうかは分からないけれど、もうおれたちはただの他人じゃなくなった。敵と味方じゃないんだ。
確かに運命のせいで人生が交差した、出会った人間なんじゃないのか。それなのに、そんな人が目の前で殺されて。俺たちよりも彼らを知っていたであろう、仲間だったであろう人間が、殺したのだ。
おれには理解ができない。
生きるためなのか。俺だって、生きるために頑張ってきた。姿を出来るだけ隠して、自分を受け入れようとして。
できなかった。でもできるようになった。おれはおれだ。おれでしかない。おれ以外の何者でもない。
それを教えてくれたのは、親方の死だった。
おれはあの人の側に居られて、幸せだった。
そう思えるような人間なのか。
お前たちは幸せなのかな。
なんでだよ。
なんで、おれは、こんなところで。
「おれは燕」
当然だった。
雪羽を助けたい。アイツのためになりたい。おれだって役に立ちたい。
レドモンのところに早く行ってやらないと。アイツは何だか不安定だから。おれが居ることで何かが変わるかもしれない。
おれに似ていると感じたんだ。おれに似る人間は居るはずがない。レドモンにおれと同じように汚い血液が流れているかどうかは分からない。でも違うと思う。でもどこか似ている。人間と人間の間から生まれたのに、なんであんな目をしているんだアイツは。
何か辛いこととか、嫌なことでもあったのか。つらいことだったんだろうな。きっと、おれと同じように。
辛かったよ。
おれ、つらかった。母さんが死んで、親方も死んで。でも雪羽が居たから。
おれはあいつを助けたい。光になってくれたアイツにお礼がしたいんだ。
こんな小さなことで人は繫がっていく。大きなことかもしれない。それは人によって感じ方が違うから。
生きるって、楽しい。そしてひどく哀しい。
おれは生きていたい。だから勝つしかないのだろう。
そして相手も、勝つしかない。生きるために。
こんなの、おかしいと思う。でも変えられないのなら。
「俺は、レジル」
白髪に、色とりどりのヘアピン。男にしては大きな緑色の瞳。暗めだ。きれいな白衣。
どんな人間か。知るか。そんなの、知らない方がましだ。
おれはおれを知っている。
おれは同情したら、負ける。
敵は敵。
駆除せよ。
〜つづく〜
百七話目です。