複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。【300話突破】 ( No.385 )
- 日時: 2013/07/06 00:18
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: ae8EVJ5z)
117・All are your sake.
ああ、これは、ダメだ。
なにがだ。
おれが、おれじゃなくなってしまうから、ダメだ。
なんで、おれはおれじゃないとけないんだ。
おれが雪羽を助けることに、意味があるから。そこにしか意味がないから。
だから、ダメなんだ。
この感覚は、何度も味わってきた。
何かが、浮き上がってくる。
血が沸騰したように熱くて、目が少し痛くて、体がうずいて、それで、頭にフィルターがかかったみたいに上手く考えられなくて。
レジルじゃないレジルが、そんなおれに驚いている。
やすりのように鋭くなった皮膚が、おれの首筋をつかんでいたレジルじゃないレジルの掌を傷つける、貫こうとする。だけれど、レジルじゃないレジルは離さなかった。
「なんだ、不純物か」
その言葉が耳にこびりつく。
なんだ、不純物って。
おれが汚いって、そういいたいのか。
むかつく、けど、こいつの言うことなんて、気にしない。
だっておれはおれだから。それ以上でも、それ以下でも。コイツの価値観は、おれの価値観に反映されない。おれの存在する意味は、おれが必要として居る人間が決めることなんだ。
ああ、そうか。
分かった。なんで俺が、こんなに血をたぎらせているのか。
怒っているんだ。むかついている。自分のことじゃない。
雪羽のことで。
ふざけんな。
雪羽は、おれのことを助けてくれたんだ。
重い、かな。
この感情を何と呼んだらいいだろう。
雪羽、おれはお前に魅了されているんだ。なんていうんだ、この気持ちは。好きっていうわけじゃない。恋愛感情じゃないんだ。ただ、とてもお前に惹かれる。
お前を見ていると、世界が赤くにじんでいくような、そんな変な感じがするのだ。
それが妙に、おれには心地よくて。
特に、この血がたぎっている状態だと。
Rinのときのような、引き寄せられている感じとは違う。呼び寄せられているという感じではない。
引き上げられているような、感じ。
ああ、それなら、いいかな。
この熱に、身を任せてみようか。
だって、おれを引き上げているのは雪羽なんだろう。雪羽っていう存在なんだろう。
おれ自身よりも、もっと信頼できるお前がおれを引き上げているのなら、それ以上の安心は納得は、無いや。
「はなせよ」
落ち着いていた越え、ではなかった。大目に見ても、そんなことは言えない。
地を這うような、そう、親方が命令をするときのような声だった。
自分の尻に違和感。しっぽだ。以前までは出なかったはずのしっぽ。そして、髪の色の移り変わりが激しい。
ああ、どうでもいい。
全部、雪羽のためだから。
〜つづく〜
百十七話目です。