複雑・ファジー小説

Re: 赤が世界を染める、その時は。【300話突破】 ( No.388 )
日時: 2013/07/31 21:42
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: ae8EVJ5z)


118・Justification for existence is on love.


目の前の少年は、本当に少年だろうか?
他人を認識する点は、容姿、性格、そして雰囲気だ。
どれも、少年の物。しかし、本当にそうか。

容姿。ベースは残っている。緑色の髪は、脳天だけしか残っていないけれど。でも、確認できる。垂れた二本の長い髪の先が、次々と色を変えていく。
皮膚から黄色い色素が少なくなり、青白くなる。一部分だけ。その部分が鱗のように浮き出て、鋭く光を反射する。
瞳が金色の眼光を放ち、じっと見上げてきている。白目の部分が灰色に浸食されていく。
尻から、緑色の毛に包まれた尻尾が飛び出してきた。先の方の毛は、髪の毛と同じように色を変える。
手足の爪が黒くなり、鋭くとがる。髪から覗く耳も、とがる。

次に、性格。
変わっているのか。

彼の骨が浮き出た手が、俺の首をつかむ。
視点が回転する。背中に衝撃。逆光で、彼の、燕の顔が見れない。

雰囲気。
違う。

髪の毛が逆立ちそうだ。びりびりと、空気が振動している。
思わず息をのんだ。

人間なのか。知るか。
コイツは燕か。燕だ。だってこれが本当の、本来の、燕。
ビーストとのハーフ。完全なる不完全。

「お前の名前になんか、興味ない」

声まで、さっきと違う。
低くなった。確かなものになった。彼の中の半分の獣が、暴れているのだ。

ああまるで、レジルのようだな。
そして今こうして目覚めている俺様は、レジルの中の獣。
半分。不完全だ。レジルが逃げるために作った俺様。
コイツは、受け止めている。自分の中の獣を受け止めているじゃないか。
なのに、レジルときたら。

「雪羽は、本当に無事なのか。なにもしていないか。本当に、本当に」

不安か。

あの、女が。
妙に色気のない女だよな。出るところが出ていないし、引っ込むところも引っ込んでいない。
礼儀も作法もわかっていないし、恥じらいもない。
なんて、あの女のことを完全にわかっているわけではないけれど。

なぜ、燕が。
こいつの半分は、あの女になにを望んでいるのだ。
なぜこんなに、あの女の周りには人が集まる。

そうじゃないか。
雷暝だって、俺様たちだって。

あの赤い女一人のために、ここで戦っているんじゃないか。

「あ、ははは、はは」

「なに笑ってるんだよ!! 答えろ! 雪羽は! 雪羽は無事なのか!?」

「無事に決まってんだろ。雷暝はああみえて紳士だからな。あの服だって、雷暝が用意したんだぜ。なかなか似合ってねぇか」

最後の言葉を疑問形にする前に、燕が殴りかかってきた。

それを顔の位置をずらすことで避け、笑う。

ああくそ、うらやましいじゃねぇか。

こんなに愛されてよ。

なぁ、雪羽。


〜つづく〜


百八話目です。

ずっと気になっていた妄想代理人を見ました。
こういうの、好きなんですよね!!