複雑・ファジー小説

Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.397 )
日時: 2013/07/31 21:43
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: ae8EVJ5z)


120・The kind of change.


体の外見的特徴から、混ざっているビーストの種類を特定することは難しい。
俺様の中で戦いから逃げて耳と目をふさいでいるレジルに血液を解析させれば済む話だろうが、そんな事のためにコイツを再び表に出すのはまずい。
完全に、この燕という男とレジルは相性が悪いのだ。頭脳的であまり戦いに積極的ではないレジルを、この獣の前に出すのはあまりにも危険すぎる。
ハイリスクで、得られる情報は少ない。少ないといっても、その情報はぜひとも欲しいものだった。
俺様個人の問題として、コイツのコンプレックスであるコイツの中の血液。それを穿り返して見せつけて叩き付けてやりたい。やりたいのだ。コイツのコンプレックスを、自分の中の最も嫌っているであろう事を。

何回か、見てきたし、雷暝の側にも何人かいたことがある。人間とビーストの混合種。ハーフであったり、はたまたクォーターであったり。
どれもこれも、不安定で脆かった。精神的にも、肉体的にも。

ショーに使われているそいつら。
貴族の家の中で床を這いずって生きるそいつら。
でぶの親父の股の下で媚を売るそいつら。
戦いの中で、大嫌いな自分のその部分を発揮させるそいつら。

どいつもこいつも、死んだ目をしていやがった。
何かをあきらめたように、何かを拒むように、何を恨んでいいのかわからずに、この怒りをどこにぶつけていいのかわからずに。
そんな奴らの目とは違った。
それに、こいつは少し特殊だ。
血が騒いでようやく、外見的に変形を起こしてハーフだと確認できる。落ち着いているときは本当にただの人間だと思っていたくらいなのだから。

牙をむき出しにする燕。
鱗のような皮膚が捲りあがる。
白衣を脱いで放り、とっさに視線をそらさせる。
やはり野性的な本能。動いているものを自然に追ってしまうようだ。
腰のホルダーから拳銃を一丁抜き取る。安全装置を手早く外し、発砲。
甲高い音に反応した燕はそれをよけようと重心を移動させながら移動。その重心を崩そうと足払いを仕掛けるが、やや遅い。
無理な体勢と分かっていながら、それを燕は避けやがる。

自然に口角が上がる。
考え事は、中のレジルに任せておこう。
それでいい。俺はただ、戦えばいい。

倒せ。
久しぶりに暴れてやろうじゃないか。
でもさ、レジル。あんまり考えすぎるなよ。
ヒダリとロムは、弱かったんだ。ただそれだけの話じゃないか。今更仲間だなんて、甘ったるいこと言うなよ。
生き残るために俺様たちはここに居るんだ。負けたから死んだ。それだけの話じゃないか。
そうだろ。今までだってそうだったのに、なんだよ、今日だけなんか、今だけなんか、みんな変じゃないか。
おかしいよ、こんなの。

認めない。


〜つづく〜


百二十話目です。