複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.403 )
- 日時: 2013/09/19 21:10
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: ae8EVJ5z)
123・You are.
どんびいた。もうこの場からいなくなりたかった。落ち始めている。
コイツは混合物なんかじゃ無いのかもしれない。完全に頭まで獣になっているのかもしれない。
何だ、それ。誰だコイツ。
燕。
そう、俺様に似ているかもしれないな。
レジルの中で飼われてきた俺様は、レジルの痛みを知っている。獣だけど、痛みを知っているんだ。俺様は生き残りたい。生き残る方法として、この俺様と似ている獣をぶちのめさないと、息の根を止めてやらないといけないのだ。
レジル、あのな、本当は俺様は知っているんだ。お前は少し、俺よりも優しすぎるんだよ、バカ野郎。
ここで優しさなんてもったら、早死にするのは明白なのにさ。まぁ、コイツが早死にしないように俺様が居るんだけど。この、優しすぎる馬鹿野郎が背負えない痛みや苦しみを背負うために俺様はうまれてきて、そして生き続けている。そして背負うと同時にコイツを苦しめているんだ。
俺様自体が、コイツを苦しめている要因の一つでもある。それは知って居る。
でもどうしようもないんだ。
コイツの内側で蔓延っている苦しみを拭ってやれるのは、目を逸らさずに見続けてやれるのは俺様しかいないっていうのに。
なんてったって、俺様だってレジルだから。
俺様も俺も、確かにレジルなんだ。
+ + + +
駄目だ、と分かっている。
『燕』
頭、のなかに、いる。
親方……?
ちがう、親方は死んだ。
おれのめのまえで、死んだ。
だから、この頭の中の親方は嘘だ。
偽物。
なぁ、おれ、がんばるって決めたじゃんか。なのに親方のこと頭の中に居て、縋ろうとするなんて。おれってだめだめだな。
「U、a……?」
口の端から涎が垂れる。
おれ、どうかしているって。
もっと頭を冷静にたもてって。
このままじゃあ、ひきずりこまれる。
……どこに?
あ、だめだ、これ以上考えちゃいけない。
『燕』
これ以上、話さないで、お願い。
これ以上、親方に縋りたくないんだ。
お願いだから。
「燕さん!! 大丈夫ですか!! 私はここに居ます!!」
空気が震える。後、肌。全身。
「YUki、羽。雪……羽、雪羽……」
ああ、安心、した。
彼女はあそこにいる。
おれも、ここにいる。
親方は、ここにはいない。
だから、大丈夫。
おれはまだ戦えるじゃないか。
軽く、ほほ笑む。
体が軽いじゃないか。
熱い、
うん、大丈夫だ。
うん、確かに、ここにいる。
〜つづく〜
百二十三話です。
う、うーん。