複雑・ファジー小説

Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.405 )
日時: 2013/10/26 15:46
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: ae8EVJ5z)



125・You who hold something.


「は、はは。はぁ? な、んだ、それ」

俺様が優しい?
いや、違うか。そうじゃないな。今のは違う。俺様に掛けられた言葉じゃない。そう。良くわかっているじゃないか。
ばかみたいに優しくてあほみたいに優しいのがレジルっていう男なんだよ。
俺様は知っているんだ。ずっとコイツの闇を見てきたんだぜ。知らないはずがないだろ。
ヒダリのこともロムのことも見てきた。コイツの中でずっと見てきた。喋ったこともある。
ロムには嫌われた。下品な奴だと。
俺様は知っていた。
ロムは魔術の才がある。アイツは磨けば光る。アイツは、何かを手に入れれば、この世界の何かを知ることができる。
なぜこの世界にビーストが居るのか。大昔に起きた、この世界の最強最悪の事件、赤き時代。その謎。
誰が知っているんだ。誰かが知っているはずなんだ。
赤き時代の、真相を。あの時代はなぜ起きたのか。
そうすれば、赤き時代を復活させて世界を変えようともくろむ雷暝のこともわかるはずだ。
アイツは一体、何がしたい。世界を変える?どうやって帰る。あの女とパルとで。どうやって赤き時代を。

『知らない方がいいことだってあるんだ。俺、思うんだ』

黙っていたレジルが話しかけてきた。
なんだ、起きてたのか。すぐ終わらせるから、待ってろよ。ヒダリとロムのぶん、殴るから。だから安心して眠ってろって。

『世界の魔力がある一点に集中している。きっと大きな魔術の準備が始まっているんだ。クイーン・ノーベルなら、気付いているだろう』

なら、あの女が魔術を発動しようとしているんじゃないのか。っていうか、そんなこと気にしなくていいだろ。俺様たちには関係ないだろ。

『関係あるさ。雷暝様の計画に影響するかもしれない』

あきれるな。雷暝のことをそこまで気付かう理由がわからない。もう、何でもいいか。お前がそれを望んでいるんだからな。

『……ありがとう。本当にごめん。お前は、俺の都合のいいように生きさせているな』

……何言っているんだ。変なこと言うなよ。

「おれは、たしかに、純粋じゃない。おれの父親はビーストで、母さんは、そいつに犯されたんだ。そこにできた、おれは、化け物なんだと、思う」

息切れだった。燕は息を荒くしながら、それでも汗なんか少しもかいていなかった。苦しそうに眉をゆがめて、それでも強い眼光で俺様を貫こうとしていた。
やっぱりこいつは、強い。体じゃない。力じゃなくて、心が。まっすぐで、折れない。
こんな小さな体で、一体何を背負ってきたんだ。燕の中の血液が、そうさせているのかもしれない。

俺は白衣の裏から拳銃を取り出した。

そろそろ、本気で戦った方がいいかもしれない。


〜つづく〜


百二十四話目です。