複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.407 )
- 日時: 2014/10/13 16:51
- 名前: 揶揄菟唖 (ID: ZFblzpHM)
127・The misfortune which has changed.
大丈夫だ。
レジルのことを圧倒する燕。
やっぱり彼は強い。
精神が。
私は、燕と親方のことを良く知らない。
どれだけ親しい関係だったのかも。
親方が死んだときにあれだけ取り乱していた子が、私のためにあれだけ頑張ってくれている。
嬉しい。
素直に嬉しいと、思う。
出会えてよかった。
大げさかもしれないけど、太陽のような燕に出会えて、私のことを大切に思ってくれているようで、こんなに嬉しいと感じられる。
生きるって、人と関わることなんだなって。
そう思える。
+ + + +
ぶるりと、空気が震えたような気がした。
いや、たしかに震えたのだ。
髪の毛が逆立つような感覚。
恐怖を感じている?
まさか、この俺様が。
口角がやや震える。
認めない。
俺様は、勝つしかない。生きるしかない。
空気が、変わった。
獣だった。
燕はただの獣だったはずだ。
明らかに人間の雰囲気ではなかった。
でも、今は。
人間であり、そうでない。
なんなんだ、こいつは。
ビーストとのハーフだと話していたな。
まさか。
まさか、自分の中のビーストの血をモノにしたというのか。
つっこんでくる燕の姿をとらえて。
『おい!!』
無理だった。
意識が持っていかれる。
あいつ、速すぎる。
ただ獣だった時よりも速い。
目で追えない。
理性を取り戻した行動は、さっきよりも読みやすくなったはずなのに。
なんとかとらえようとトリガーを絞るが、とらえられない。
クソッ!!
「おれは負けられないんだ!」
まっすぐな目。
きらいだなァ。
そんな目、するなよ。
俺様がどれだけけがれているのか、はっきり見えてしまっているようで、すごく嫌なんだ。落ち着かない。
苦しい。
「俺様も、生きないといけないんだよ」
俺様自身のためにも。
俺様を飼う、こいつのためにも。
口の中の血の塊を吐き出す。
隙が無い構えを取る燕。
一筋縄じゃあ、やっぱり行かないな。
何かを守ろうとするやつって、なんでこんなに強くて、大きく感じるのだろう。
俺様らしくない考え。
「ッ!!」
燕が容赦なく襲ってくる。
蹴りを腕で庇うが、なんてったって威力が半端じゃない。
全身に衝撃がいきわたり、肺が押しつぶされそうだった。
燕と目があった。
強い眼光をともした瞳に俺様が映っている。
あぁ、こんな強そうな顔しちゃって。
距離を取ろうとする燕の髪の毛をわしづかみにして、頭突きを喰らわせる。
怯む少年の腹に、膝を叩き込む。
分泌されてくる血液は止まらない。
この味には慣れないんだよな。
どうしても。
燕が今度は俺に頭突きを喰らわせてくる。
ぐらつく意識。
それでも、ニヤついてしまう。
あぁ、次はどうしようかな。
そう思った時。
膝が、地面に着いた。
「……もう、終わりだよな」
燕の額がぱっりと割れて、血が流れおちている。
もうちょっと、意識を保てると思った。
だけど、違う。
この体は、戦闘向きじゃない。
研究ばかりしていたレジルの体は弱弱しい。今までどうにか生きてきたのも、俺様が無理やり体を動かして、無理をしていたせいだ。
こんなに戦いが長引いたことは無かった。
ここで、限界か。
「もらうぜ、腕輪」
申し訳なさそうに俺様を見下ろす燕にイライラしてくる。
「俺様……をっ、バカにすんじゃ、ねぇよっ!!」
だから俺様は、残りの銃弾をすべて、燕の腹に撃ち込んだ。
〜つづく〜