複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.409 )
- 日時: 2016/02/25 00:36
- 名前: 揶揄菟唖 (ID: /dHAoPqW)
129・Promise of two people.
ガーディアンのことをどう思っているかなんて、馬鹿な奴だなと、その程度だ。レジルも大概だが、こいつも一級品のバカ。
なんでかなんて、決まっている、だって雷瞑のそばでいいように使われている。
ガーディアンは恐ろしいくらいに純粋であったから、恐ろしいほどに空っぽであったから、簡単に雷瞑の闇を飲み込み、浸った。
俺様にはわかる。
雷瞑は、そんなからっぽで純粋なガーディアンとそばに置くことで、少しでも光に認められたかったんだ。自分がどれほど孤独で寂しくて、闇の中に生きているかを知っている、賢く、そして愚かに君臨する雷瞑は、救いのためにガーディアンという光を汚した。
結局、人間なんだ。
雷瞑も、人間で。寂しくて仕方がなかったんだ。
承認欲求の塊というか。
死ぬ前なのに、穏やかな気持ちだった。
そんなわけあるか、って言いたいけど、なんでかな。本当に穏やかなんだ。俺様の前に死んでいった、ロムとヒダリもこんな感情だったのかな。
いざ死ぬってなったら、それほど生きたくないものかもな。
ふと、右手にぬくもりを感じた。
くそ。
そんなはずないのに。
手を、握ってきた。
なんだよ、レジル。
俺様たちはいつの間にか二人になっていた。
一人で狂いそうに、一人で苦しみ続けたレジルの声に呼ばれて、俺様はやってきたんだぜ。深い深い暗闇の中から、俺様はやってきた。
レジルはずっと研究所で研究を重ねていた。野望があって、目標があって、それに向かってずっとやってきたんだ。
レジルは嫌なほどに冷静で、年齢の割に思い切りがなくて、研究所の中では慎重だった。そんな優秀なレジルに嫉妬をした連中は、レジルをのけ者にしやがった。
レジルは一人になった。
いや、ずっと前から一人だったのだ。
一人でずっと、自分の目標に向かって走っていた。
そう思うことで、自分を慰めていた。
そんな日常の中に植え付けられた孤独感が俺様を呼んだ。
生き物でも何でもない、空気の中の奥底にあった鼓動が、生き物としてレジルの中に生まれた。
それが俺様。
名前を教えてやるなんて言ったけど、あれ、ウソなんだわ。
ごめんな、クソガキ。
ああ、燕って言ったか。
燕。
いい名前だよな。南の方の名前だ。母親からもらったと言っていた。
愛されていることを感じた。
燕は、愛されている。いろんなモノに愛されて、そして愛してきている。
愛に包まれている。
ああくそ。
それなら、こんな不純物が美しく愛の中にいるならば、ガーディアンだってそうなれたはずなのに。どうしてだろうな。
全部全部、雷瞑が悪い。
ここに来たことで、レジルも、俺様も死ぬんだ。
でも、悪くなかったぜ。俺様、ここが割と好きだった。レジルの合間に目覚めるだけの時間だったけど、生きられた。
だから、それでいいのかもな。
こじつけみたいだな。
醜い。敗者にはお似合いかな。
ぎゅ、っと手を握る力が強くなる。
悪いな、レジル。
本当に。
お前の体、ズタボロだ。これ、たぶん死んでも治らないぜ。
ガーディアンが、あの弱虫が、雷瞑の淀んだ光が、俺様に向かって、死を与える。
その瞬間さえも、わからなかった。
目の能力がもうほとんど生きていなかったからだ。
それでも俺様は、右手だけの感触だけは失わまいと、していた。
名前。
言うなら。
名乗るなら。
レジルって、言いたかったな。
俺様とレジルは、二人で一人だから。
……くっせぇセリフ。
今度は別の体に生まれような。
〜つづく〜