複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。参照200だから自画像描いた ( No.43 )
- 日時: 2012/05/10 21:51
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: yZ7ICI8F)
19・赤、憧れに入る。
中に入ってまず目に入るのは綺麗なお姉さんが2人居るカウンター。
でもやっぱり私をさっき助けてくれたお姉さんの方が、綺麗だった。
全然。比べ物にならないくらい。
去っていく姿を頭にもう一度浮かべてみる。
まさに、クールビューティー。
この言葉が凄く合う。
カウンターに向かうライアーの背中なんて、見向きもせずに辺りを見渡した。
いや、ちゃんとついて行ってるけれど。
もう迷惑はかけられない。
掃除が隅々まで行き渡っていた。心なしかいい匂いがする気がする。
でもこれだけ広いと掃除は凄く大変そうだ。
給料はどれくらいなのだろうか。
いっそのことハンターをやめて、ここの清掃員になって見たいものだ。
でも私は今ライアーについて行くという義務があるからそれは叶わない。
あの私が折っちゃった武器は、私が一生このハンターを続けていても返せない値段だろうから。
あ、思い出すと気分が重い。
一階は誰でも入れるようだが、ここから先は関係者以外は入れないらしい。
今、お姉さんが話している。
お姉さんはちょっと頬を染めている。
やめておいたほうがいい。
確かに顔は整っているし、声も安定してるし、面倒見もいいけれど、部屋に入るときにノックをしなかったり、人のことをあきれた目で見るし、いつだって不機嫌そうだし、冷たいから、ライアーはオススメしない。
だってお姉さん美人なんだから、男の人を選ぶ権利はあると思う。
なんて意味の無いことを考えてみる。
実際私は緊張していた。
だって今私はあの憧れのハラダ・ファン・ゴの本社の中にいる。中の空気を吸っている。
やばい、感動だ。
ちょっと泣きそう。
だから私の頭は混乱しているんだ。
混乱したり落ち込んだり忙しい奴だな、なんてライアーに言われそうだ。
そのライアーは今適当に受付のお姉さんの話をあしらっている。
ちゃんと聞いておいてくれよ。
見学させてもらう身なんだから、こっちは。
というかお姉さんはなんで私のことを、ちらちら見てくるんだろう。
あ、もしかして。
ないないない。それはない。
私はライアーのなんでもない。
変な誤解はやめてくれよ、お願いだから。
私は確かにライアーと一緒に行動しているがそれは、その、そういう関係ではなく全く別の、いわゆる、主従関係に近い物で。
「……どうした」
「ひぃっ!?」
吃驚、したぁ。
もういきなり話しかけないで欲しい。
私は今人生最大と言っても過言ではない問題に、立ち向かっていたんだ。
「見学していいってよ」
お、おぉ。
流石だなぁ。
最早顔パス。
「本当ですか! じ、じゃあ行きましょう!」
まだ少しさっきの問題が頭の中にあるが、今はもう忘れろ。
楽しまなくては。
ライアーと一緒でなければ、ここにはもう二度と来れないだろうし。
興奮した私はライアーの腕を掴んで、ぐんぐん遠くに進む。
お姉さんの視線には気付かないフリをして。
+ + + +
予定が少し狂ってしまった。
だけど支障は無い。
ほんの少しの狂いだ。
道で麻薬取引の野郎に絡まれている少女を助けて、ちょっと時間が遅れただけだ。
黒い手袋をきゅっとはめる。
よし、時間だ。
いつもより早く時間を決めたのには訳がある。
なんていったってハラダ・ファン・ゴの本社だ。
何か起きても不思議ではない。
念のため余裕を持たせただけ。
会社の、裏の人目に付き辛い壁に背を預けていたあたしは、仕事をするべく会社を見つめた。
やっぱり好きにはなれない。
この感じ。
金と欲が渦巻く感じ。
おっと、私情を挟むのはよくない。
今日もちゃんと仕事をして帰る。
熱いシャワーが浴びたいし。
チェック済みの換気口の鉄格子を、ドライバーで開けて中に侵入する。
汚いけれど気にしない。
気にしてたらこの仕事やってけないし。
それにしても、警備が薄い。
なんでだろう。
誰か、用心棒でも雇っているのだろうか。
用心棒、か。
アイツじゃなきゃいいけど。
あたしの嫌な予感って当たるからなぁ。
+ + + +
「うっし、カンコ、行くか」
突然自分の腕時計を確認して、ジャルドがソファから腰をあげた。
私も部屋の中にある無駄に金がかかってそうな時計に目をやると、まだ1時間くらい時間があった。
「まだ、時間あるよ」
私が動かないままそう言うと、ジャルドは振り向いて口角を上げた。
凄く楽しそうだ。
「いやぁ、ちょっと先に動くんだよ、アイツは」
アイツか。
そういえば今回の仕事乗り気だったし、やっぱり選んだ理由は私と一緒にやれるってだけじゃなかったんだろうな。
言ってくれれば良かったのに。
今回の得物が誰なのか。
「カンコ、部屋に残ってるか?」
ジャルドはいつもそれを言う。私に問う。
それで遊んでいるんだ。
私の答えを知っているくせにさ。
でも不満は言わない。
ジャルドと遊んであげる。
じゃないとジャルド不機嫌になっちゃうから。
ジャルド、つまらないこと嫌いだもんね。
「一緒に行くよ」
もしかしたらジャルドの最後かもしれないし。
それは絶対、私見たいもの。
+ + + +
ぞわぞわと嫌な感じがした。
うーん、なんだろう。
廊下で首を傾げたらみんなに変な目で見られた。
だって気になるんだもん。
俺が、感じるこの嫌な感じ、一体なんだろう。
心当たりは無い。
もしや、昼間飯を食べ過ぎたか?
そんなこともないな。
昼間は何かと忙しかった。
上司からの嫌がらせを今日受けてたから。
何時もより多い仕事を押し付けられていた。
俺だってちょっと傷ついてたんだからね。
怒ったりは流石にしたくない。
またクビにはなりたくないからね。
ここ都会だから。
アイツに会えるかもしれない。
いつか見つけてやる。
絶対に見つけ出して。
この手で。
俺はゆっくりと拳を握り締めた。
右目の目盛りが少しだけ動いた。
〜つづく〜
十九話目です。
最後の目線は誰だかわかりましたか?
誰か分かるように書いたつもりなんですが………。
謎に包まれた、彼です。
因みに名前募集中だったりします。
私の友達から貰ったキャラなので友達に名前を出してもらおうと思ったのですが彼女はどうも名前のセンスが………いえなんでも。
なので何かアイディアありましたら遠慮なく言ってくださいませ!
もしかしたら採用させていただくと思います!
次回は記念すべき二十話目です。
私、二十話目まで書くのは初めてなので感動です。
あ、この話は次回。
それではまた!