複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。参照200で目玉抉れた ( No.47 )
- 日時: 2012/05/11 19:19
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: 1HHiytFf)
23・赤が走っているとき。2
なんとなく歩いていたらビンゴだったようで、俺が捜していた女と遭遇した。
よっしゃ、ラッキーだな、俺。
今日はちょっとついているかもしれない。
いろんなことに挑戦してみたくなるね。
俺は絶対そんなことはしないけどね。
まぁそんなことはどうでも良くて。
俺が折角面白おかしくお話してやったのに、この女と来たらとっとと帰ろうとしやがった。
全く罰当たりな奴だ。
俺が折角機嫌がいいのだからもう少し付き合え。
逃げようとする女の背中を、鞘に入れたままの刀で勢い良く突いてやった。
結構な痛みのはずだ。
証拠に女はバランスを崩した。
いや、正確にはかけた、だった。
そこは意外にも女は頭がいいようで、もう俺からは逃げられないと判断したようだ。
うん。
正しい。
その判断は正しい。
俺はまったくこれっぽっちもこの女を逃がす気なんてない。
俺がそんな生易しい奴じゃないことくらい、この女は知っているはずだ。
俺にとってこの女はオモチャだ。
話しているとそれなりに楽しい。
俺も結構心を許している。
だから俺のネクタイは緩んでいるし、シャツはだらしなくズボンからはみ出している。
言葉遣いだってかなり荒くなっている。
俺はコイツの何処がそんなに気に入っているのだろうか。
分からないな。
何となくだけどカンコを連れている理由は分かる。
カンコのことが大切だから。
多分。
まぁはっきりしていなくても俺は別にいいんだ。
分からないからってカンコを手放す理由にはならないから。
さて、本題に戻そう。
女はきっと俺を睨みつけていた。
わぁ、怖くない。
思わず口角が上がってしまった。
俺は少しだけ刀を握っている右手に力をこめた。
それが気に入らないようで女の眉間に皺がよる。
なぁ、うぜぇか? 俺。
一度だけカンコにそう聞いたことがある。
さて、カンコはその時なんて答えたっけかな。
もう随分昔だし、忘れた。
特に重要じゃないし。
「あたしの仕事、なんで邪魔するの」
女は酷くイラついているようだった。俺だって分かる。
うぜぇんだ、俺。
それはコイツにとってとてつもなく、メガトンギガント級にうぜぇんだ。
なんだそれ。
超楽しいじゃん。
嫌われ者の俺。淋しい奴な俺。
随分とワクワクゾクゾクする展開じゃん。
それから俺の復讐劇が始まるんだな。
ステージをもぶち壊すほどの復讐劇! 一番の見ものだね。
「なぁんとなぁぁぁくぅっ」
短く息を吐いた。
俺はいつもあまりモーションをかけずに行動するが、今はちょっと場面が違う。
俺の息は荒くなってきている。
興奮してきた。
超楽しい。
やべぇ。
ということで、6歩で間合いを詰めて、再び鞘に入れたままの刀を女の腹目掛けて突き出した。
突き。
俺はその攻撃が好きだ。
今決めたけど。
「ぐぁっ」
女はだが、咄嗟に一歩身を引いたようで直撃を免れたようだ。
スカッと当たらないのは実に不愉快だが、まぁしょうがない。
かなりの痛みのはずだが、女は腹を押さえただけで耐えているようだ。
「あぁぁ、ちょっと楽しくなってきたぁ」
特に意味はないがぷらぷらと刀をゆすってみる。
きっと今カンコは少し不思議そうな顔をしているだろう。
俺の後ろに居るからわからないけど。
そういえば俺はこいつと遊ぶのが仕事ではない。
ま、いっか。
だって楽しいし。
こいつが共犯を連れてくるなんて考えられない。
この女の性格的にそうに違いない。
こいつは他人に頼ることを嫌う。
俺も似たようなことがある。
それはきっと同族嫌悪。
俺はこの女が嫌いだ。
気に入っていると同時に大嫌いだ。
この女も俺のことが嫌いだ。
それでいいじゃないか。
俺とこの女の関係は犬猿の仲って事で。
この世界中全ての人間と仲良くできるなんて事は、できるはずはないのだから。
「そう思うだろぉ? 『薄汚れた子猫(ダーティキティー)』」
この女はかなり、とまではいかないがそれなりと有名人だ。
なんせこの女の上司は、裏の仕事を仕切る会社の社長なのだから。
この女自身は気付いていないが、この女の仕事は他の社員に比べて多い。
多分社長はこの女を気に入っているのだろう。
確かに優秀だ。
それにスタイルは抜群で顔も申し分ない。
その身体を使って仕事をする時だってある。
だからか名は知れ渡っており2つ名まで持っている。
たっぷりの皮肉をこめて『薄汚れた子猫(ダーティキティー)』と。
「あんた意味不明なのよっ!!」
整った顔を歪めて突っ込んでくるその女。
確かに意味不明だよな。
カンコのように俺が満足する答えを、お前なんかが返せるわけがない。
そんなのは知っているんだ。
女は小さな折り畳みナイフを俺に向けて走ってきていた。
確かにコイツは弱くはない。
弱かったらあの社長に雇われたりなんかしていないだろう。
だが俺よりははるかに弱い。
自惚れじゃない。
俺はこいつが嫌いだ。
でもいつも命は奪わない。
勝てないと知っているはずなのに、いつも突っ込んでくるこの女の度胸は、褒めるべきところがあるだろう。
諦めの早い俺には考えられない。
俺は乾いた唇を舌で舐めた。
子猫ちゃんと遊ぶのは嫌いじゃないからな。
〜つづく〜
二十三話目です。
今回はある人の名前が明かされました。
キャラが定まらなくなってきているのは内緒です。