複雑・ファジー小説
- Re: 赤。【題名を変更するかもです】 ( No.5 )
- 日時: 2012/05/09 20:48
- 名前: 揶揄菟唖 (ID: LQdao1mG)
5・赤、黒と歩く。
全てが赤かった。
世界の全てが赤かった。
その赤の中で、キミだけが笑っていた。
+ + + +
「いやぁー、驚きましたよーあなたでしたかー」
バカ。
ついてくんな。
流石にそれは無理か。
じゃあ帰れ。
言いたい事は山ほどある。
久しぶりに二人でやる依頼でもやろうと思っていたら相棒はコイツだった。
失敗した。
いやぁ、本当に。
やめときゃあよかった。
みるからに素人。
つまり、庇うのがめんどくさい。
もう庇わなくても良いだろうか。
絶対自分の身も守れないような奴だ。
昨日の時点でそれは分かっていた。
「昨日はありがとうございましたー」
それ、12回目。
間延びした敬語が背後に付きまとう。
俺が何も返さないのに赤い女は楽しそうに1人で喋っている。
あー、耳障りだ。
というか助けたのは気まぐれなのに。
俺の米神が痙攣してきた頃、それは不意に叫ばれた。
「べきしょい!」
……。
……べきしょい。
……べきしょい……だと……?
「……? どうしましたー?」
俺が足を止めるとそいつも歩くのをやめた。
でも俺の前に出ようとしない。
「……?」
いらいらして、振り返る。
すると女はアホ面を傾げて俺をじっと見つめていた。
「お前……」
久しぶりに声を出すと自分でも驚くくらい掠れていた。
「はいー?」
眉間が震えてるのが分かる。
あーいらいらする。
「……体調管理も自分でできないのか……」
こいつの格好は秋の森を歩くのに適していない。
だって、ジャージ一枚。
そんだけ。
それであんな不細工なくしゃみを聞かされたら、もっと着込めと言いたくなるのもおかしくはない。
俺だって冬用のコートにしてきた。
「あぁー……。大丈夫ですよー」
大丈夫じゃないだろ。
いや、違う。
俺が言っているのは『着込め』というだけで心配しているわけじゃない。
勘違いはやめろとコイツをぶん殴りたいくらいだ。
そういえばコイツはちゃんと昨日の傷を手当したのか。
まさか。
そのままって事はないだろうな。
「……ちょっとこっちこい」
+ + + +
さっきからレッドライアーが怒っている。
私が話しかけても返事をしてくれない。
なんとか何か言ってほしくて、でも何も思いつかないときはとりあえず昨日のことのお礼を言ってみた。
でも相変らず返事は聞こえない。
どうしよう。
もとから私は頭が悪いからなんでレッドライアーが怒っているのか分からない。
ちょっとだけ泣きそうになった時、鼻がむずむずした。
なんてバカっぽいことをしてしまいそうになっているんだ私は。
「べきしょい!」
あぁ、でちゃった。
鼻水を啜りながら熱くなり始める頬を冷まそうとしてみる。
するとレッドライアーが足を止めた。
驚いて私の足も止まる。
「……? どうしましたー?」
初めて見せてくれた反応にドキドキしながらレッドライアーの言葉を待つ。
「……?」
しばらく待ってみてやっと彼が振り返る。
酷く、不機嫌そうだった。
眉間に皺が寄り、目が細められ、口が歪んでいる。
なんだか最近人が笑った顔を見ていないような気がするのは私だけだろうか。
「お前……」
掠れたやや低い、だが男性のものとはっきり分かる声が私を呼ぶ。
「はいー?」
返事をする。
それだけのことなのになんだかワクワクしている私はおかしいのだろうか。
「……体調管理も自分でできないのか……」
体調管理。
なんだ。
そんなことを心配してくれていたのか。
生憎私は金銭的な問題で服がジャージしかない。
いつか赤い可愛いジャケットでも欲しいなぁ。
「あぁー……。大丈夫ですよー」
自分のジャージを引っ張ってみれば変わらない赤が視界を埋め尽くした。
もっとも、昨日の一件で左腕から背中にかけて血で赤が深くなってしまったけれど。
引き裂かれた部分を縫うのが大変だった。
裁縫には慣れていないから指も少しだけ傷つけてしまった。
しばらくレッドライアーは考えるような素振りを見せて、不機嫌そうな顔のまま私に向かって手招きをして見せた。
「……ちょっとこっちこい」
〜つづく〜
五話目ですかね。
今回は会話が多い。
いつも更新が遅いのにクオリティ低くてごめんなさい。
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