複雑・ファジー小説
- Re: 赤。【題名を変更するかもです】 ( No.6 )
- 日時: 2012/05/09 20:52
- 名前: 揶揄菟唖 (ID: LQdao1mG)
6・赤、黒を感じる。
ハラダ・ファン・ゴ。
まさか今回の話でそれが出るとは思わなかった。
ハラダ・ファン・ゴといえば有名な超高級な武器を扱うブランドだ。
それは知っている。
マニアも多いらしいがあたしはあのデザインは好きじゃない。
いや、デザインも気に入らない。
と言ったほうが近いか。
デザイン以外に気に入らないところは?と聞かれればあたしは多分口ごもってしまうだろう。
上手くいえないが製作者の心が無い、と言うのだろうか。
あのブランドの武器から感じるものは金。欲。
それが本当に気に入らない。
『聞いているのか』
がらがらした大分歳を食っている男。
それが今回の『客』らしい。
できれば若い男の声が聞きたかったものだ。
そう文句も言っていられないのが現状だが。
町の裏通りにひっそりとあった公衆電話で今あたしは『客』と話している。
辺りは薄暗く人通りも少ない。
いるのは麻薬に手を出したバカたちだけ。
仲間を増やそうと生気の失った瞳をぎらつかせている。
ほら、あそこにもいる。
『客』のことはあたしはあまり知らない。
何をしているだとか、顔だとか、本名だとか。
知っているのは声だけ。
「聞いてるわよ」
『客』はあたしのことを心から信用していない。
『客』が信用しているのはあたしの上司だけだと思う。
もっともその信頼も薄く、儚いものだ。
なんせあたしにも顔を出さないのだ、あのバカ上司は。
名前も顔も何もかも知らない。
時々手紙が来てあたしに仕事をさせて後で金を送って来る。
その点からいったらまだあたしはこの『客』のほうが信頼できる。
『良いか、頼んだぞ』
最後まで声が震えていた『客』。
多分こういうことを頼むには慣れているが、ハラダ・ファン・ゴのような大手企業を相手にした事は無いのだろう。
それで、ビビってる。
なさけないなぁ。
そう思いながら電信音を吐き出す受話器を置いた。
+ + + +
手招きに従い、私はレッドライアーに近寄る。
と、レッドライアーは私のジャージのファスナーに手をかけた。
「?」
ファスナーに手をかけたということはすることは1つだが私はレッドライアーを信用しているし、まさかするなんて思わなかった。
彼は予想通りだが予想外のことをした。
一気に下までファスナー下げたのだ。
あきれて声も出なかった。
みるみるうちに私の顔に熱が集中していく。
「〜〜っ!?」
私は、その、あれだ。
お金がない。
だから私はジャージの下に着るようなモノも買えないわけで。
私のジャージの中をじろじろ見つめるレッドライアーは何の恥じらいもないようだ。
少しは恥じらってくれ。
「なっに、するんですかっ!?」
やっとのおもいでレッドライアーの手を振り払い、いつもは首元くらいまでしか閉めていないファスナーを最後まであげた。
本当は包帯がまいてあったから私の皮膚はあまり見えないんだけど、凄く恥ずかしかった。
レッドライアーは驚いたよな表情を作り、それからみるみるうちに表情を変えていった。
そう。
いつもの不機嫌そうな顔に。
「何って、傷ちゃんと手当てしたのか気になったんだよ」
へ?
傷?
あぁ、昨日のか。
それならちゃんと処理をした。
傷を洗って、薬を塗って、最後は包帯。
よく分かんなかったから、3時間くらいかかってしまったけれど。
薬と包帯はお金があったときについでに買っておいた。
はじめて買っておいてよかったと思う。
「大丈夫ですよ」
「…………」
不機嫌そうな顔を一瞬だけ変えて、無表情になったかとおもえばまた眉間に皺がよる。
疲れないのかな、なんておもったり。
「心配してくれてありがとうございます」
そこが少しだけ、嬉しかった。
少しは気に掛けてくれたんだと思った。
思い返せば私は1人で過ごしていた時間が多かった。
1人で安全な依頼に行って、1人で買い物に行って、1人で食事をして。
なんだか他の人とは関わることはあっても触れることはなかったと思う。
なのに、助けてもらった。
久しぶりに自分が世界と繋がっていることを感じた。
「……心配じゃない」
レッドライアーはそれだけいうとまた前を向いて歩き出す。
その後ろに私はついていく。
はじめての安全じゃない狩り。
それが待っていると思うとすごくワクワクして、ドキドキした。
私がまた昨日のことについてのお礼をいうとレッドライアーは頭の後ろを乱暴に掻き毟った。
反応してくれたことが嬉しくて私はレッドライアーの後ろではなく隣を歩こうと少しだけ歩調を速めた。
〜つづく〜
六話目………ですよね。
これはなんだかほかのものよりもすらすらかけます。
するとほかのものは更新が遅くなります。
視点がころころかわってごめんなさい。
next⇒赤、黒と戦う。