複雑・ファジー小説

Re: 赤が世界を(略)参照300で内臓が口から出てきた。 ( No.60 )
日時: 2012/05/12 21:33
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: WylDIAQ4)


36・赤。


訳が分からない。
どうして。

「アスラ」

弱弱しい声だった。
終わりが近い?
ふざけるな。
まだだ。
違う。

「……せんぱ、」

声がかすれている。
誰のって、俺の。俺の、声が。
戸惑っている。
俺が。

先輩。

「心配するな、俺が居る」

しっかりした声だった。
対照的だった。
俺の声と違って震えてなんかいなかった。
終わりが近いのに。
来るなよ。終わり。どっかいけ。

「……どこ、に、せんぱ、」

情けないな、俺。
しっかりしろよ。

「泣くなよ」

俺が殺した。

久しぶりに命を奪った。
虚しい。
マスター。励ましてよ。マスターの声が聞きたいよ。俺、そろそろやばいよ。限界だよ。心が。

冷たくなっていく先輩を、俺は乾いた眼球のままで見送った。

アイツ等を追う気になれなかった。

ねぇ、先輩。
貴方は何を見て
『泣くなよ』
って言ったの?

 + + + +

「あんた!」

「あ?」

大体の話を聞いた後、赤女がうるさいのでとりあえず金髪女の用事を済ませようと、金髪女の案内に従ってきた。

すると金髪女があるドアの前で暴れ始めた。

「いい加減おろしなさいよっ!」

別に軽いし、負担ではなかったけれど、こんな風に暴れられると面倒なので仕方なくおろす。

やっぱり目立った外傷はないものの、体力的にきているようだ。
まぁ、泥棒だし用心棒とでも戦ってきたのだろう。
結構腕は経つのだろうか。
興味はないけど。

「あぁ、レッドライアー、バカ、その」

ふらふらとしていて顔色も優れない。
でもコイツはどうやら、負けず嫌いで、人にあまり頼られたくないらしく、ここで俺たちと別れを告げる気らしい。

「ぁりがと」

それは短いけれどしっかりとした言葉だった。
俺の場合、何もしていないが別にいいか。

「えっ、わたっ」

ということでバカはここで黙らせておく。
どうせ『まだ手伝いますよ』とか言うつもりだったのだろう。
俺はもう面倒なことにしたくはないので、気絶させて金髪女と同じように肩に担いだ。
それに、俺は泥棒とかそういうことは詳しくないから、俺と赤女がついていっても足手まといだ。

ここで別れるのがお互いにとっていいだろう。

「そうか、じゃあな」

金髪女は少し赤女のことを心配しているようだった。
でも俺はさっさとここを出たいし、いい加減ゆっくりしたい。
左手も治したい。
さっきは運よく赤女に気付かれなかったが、時間の問題だろう。
?
気付かれたからってなんだってんだ?
ま、いっか。

本当に、疲れた。
寝たい。眠い。

 + + + +

「カンコ? 大丈夫か?」

ジャルドの声は凄く落ち着く。
私はしっかりとジャルドのシャツを握り締めていた。

「う、ん。もう大丈夫」

段々と胸のざわめきは収まってきていた。

本当にあの女なのだろうか。
私が感じたこの嫌な感じは。

「ねぇ、ジャルド?」

「どうした?」

私が我が儘を言うのは珍しいかな。

でも。

「離れよう、ここ」

嫌なんだ。
吐き気がするし、鳥肌が止まらない。
色んな思いが、恨みが、混じりすぎているんだ、ここは。
とても普通に生活できないよ。

「いいよ」

ジャルドは優しく微笑んでくれた。

テンポの良い優しい心音に私は頭を押し付けた。

凄く、眠たいよ。


〜エンド〜


一章完結!
一生は雪羽とライアーとカンコとジャルドとキティーとアスラの話です。
正直、グダグダでしたが終わることができてよかったです。
次からは二章。
雪羽とライアーの旅はまだ続くようです。
会話分多い………………w
最初は切ない感じを出そうとあえて白くしてみましたよ。
アスラ君はまた出るのでしょうか。