複雑・ファジー小説

Re: 赤が世界を(略)やっと一章完結! ( No.62 )
日時: 2012/05/13 13:24
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: TRpDG/gC)


2・生。


早く終わらないかな。私の人生。もういいよ。疲れたもん。そろそろでしょ。あと少しでしょ。あと少しの辛抱。つまらないよ。毎日毎日さ。私同じことの繰り返しで。進まないもん。進む気なんてないし。疲れるだけじゃん。進むとか進まないとか、考えてみるとバカらしいじゃん。くだらないじゃん。それはさ、人生を楽しめている人にしか言えないセリフでしょ。なら私には関係ないし。早く終わらないかな。こんなこと考えているだけの人生だよ。要らないよ。必要ないよ。必要ないものを、いつまでもとっておくなんて、バカのすることだよ。私バカじゃないし。だから早く捨てたいのよ。終わらせたいのよ。

「お嬢様。お医者様がいらっしゃいましたよ。診察を」

「うるさいなぁ」

邪魔しないでよ。私、もう何も考えたくないの。生きているだけで精一杯なの。もう疲れたんだって。ほっといてよ。私の人生が、あんたたちの人生に、何か問題を与える? 与えないでしょ。関係ないでしょ。だから放って置いて。

「お嬢様……」

年配の私の世話係が、何かを諦めたように息を吐き出した。

そう。それでいいの。私はそんな環境が落ち着くの。それでいいの。聞かないでよ。それでいいって。私もう諦めたのよ。諦める以前に、生きたいって思ったことないし。私生まれた時点で負け組だし。その時点でやる気失くしているし。我が儘でいいよ。世間体なんて関係ないよ。私は私で充分だよ。その私も捨てたいんだよ。

「お嬢様の病気は治すことができるのですよ?」

「その治療費、町にでもばら撒いてきたら?」

きっと皆必死になって飛びつくよ。少し面白いかもね。少しだけ。だから、少しだけだから私は生きる気になんてならないよ。残念でした。

私はベッドの中から窓の外を見守っている。神様みたい。少し高い位置から何も考えないでみんなの世界を見守る。この屋敷には3階だって4階だってあるけれど、私はここの2階でいいの。少し高い位置からで良い。高すぎると見えにくいでしょ。人の表情とか。意外とみていると楽しいの。でも私が生き続ける理由にはならないの。

「……お嬢様……」

しばらくすると、3人程居た世話係は諦めて部屋を出て行った。
広すぎるこの部屋は静寂に包まれる。
私はベッドからあまり出ないのに、何でこんなに広いんだろう。
意味ない。バカじゃないの。お父様もお母様も、私のこと心配しにきたりしないくせに、世話係に伝言頼んでさ。私に直接言いにこいよ。本当にバカ。それじゃあ信用できないよ。お父様もお母様も心配しているって? 本当に? ただの言葉じゃん。そんなの。私が生きる理由にはならないよ。残念でした。誰も悲しまないじゃん。私、誰ともつながっていないんだから。

残念でした。
誰が残念なのさ。

「バカばっか」

私は1人きりの部屋で膝を抱えて眠ろうとした。

死ぬのも、コレだけ簡単ならいいのに。


〜つづく〜


二話目です。
二章目のメイン登場です。
察しはつくでしょう?
あぁなってそうなっていくのです。