複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を(略)同じような小説書いている方アドバイス下さい! ( No.64 )
- 日時: 2012/05/13 13:33
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: TRpDG/gC)
4・無駄。
分かっていた。
小さい頃から、私は自分の死を悟っていた。
幼い頃、お母様が私の手を握って聞かせてくれた。
貴女は不幸なんかじゃないわ。いつかきっとお外で遊べるようになるからね。心配しなくていいわ。大丈夫よ。安心して。
私は身体が弱かったから、外に出ることは滅多になかった。
それを気遣ったお母様の言葉を、私は両手でしっかりと受け取った。
しばらくして、手放した。
必要無い。私にこの言葉は必要無い。
幼いながらに私は、私のことをよく理解していたからだ。
お母様は所詮、お母様なのだ。
私ではない。
私は別に生きたくなかった。
生き続ける理由がなかった。
毎日に楽しみがなかった。
暇ではなかった。
暇という感情を抱くことさえめんどくさい。
もう、どうでもいい。
結局、私がこれからどうしようが、生きようが、死のうが、無駄なんだ。
お父様も声をかけてくれたことがしばしばあった。
泣くなよ。お前は大丈夫だ。必ず幸せになれるからな。
私はその言葉を聞き流した。
聞く価値がない。私は泣いてなんかない。大丈夫なんてどうでもいい。幸せになんかならなくて良い。
そんなことを毎日考えていたら、誰も私に声をかけなくなった。
お母様の顔も、お父様の顔も最近見ていない。声も聞いていない。
私は一体、何を望んでいるのだろう。
答えてくれる人なんか誰もいないと知っていた。
+ + + +
「仕事ぉ?」
赤女が帰ってきたのは、もう日も沈みかけた夕方だった。
奴はなんだか妙に興奮しているようだが、何とかそれを表に出さないようにしている。
出ているが。
「はい! しばらくの間、やることになったんです!」
なんだか楽しそうな赤女の呼吸は荒く、頬は赤い。
何だコイツ。仕事ぐらいで。
俺は仕事なんかしたことない。
最初からハンターをやっている。
だからなのか、あまり『仕事』という単語に良い印象は受けない。
ここはしかも都会だ。
「どんな仕事だ? 危険な仕事じゃないだろうな?」
赤女はバカだ。
自分では、最近迷惑をかけないようにコイツなりに努力はしているようだが、バカがやる『努力』なんて高が知れている。
不安だった。心配ではない。ここ重要。
「はい! ちゃんと確認してきました!」
赤女は椅子に座らずに、ベッドに手を付いている。
赤女が時折視線を向ける左手に、俺は無意識に力を入れていた。
少しだけ、痛い。
だが、気にすることではない。
よくある傷だ。俺にしてはかすり傷程度だし。
肉がそげただけだ。
もう大丈夫なのに。
「きぐるみを着て、風船を配るだけですって!」
「……へぇ」
なんか、赤女っぽい。
赤女はなんだか、子供っぽい、幼いイメージがあるので妙にしっくりする。
大体その仕事は、赤女が自分で探したのだろうか。
だとしたら、コイツ、案外自分のことを良く分かっているようだ。
俺は、どうなのだろうか。俺はちゃんと、自分のことを分かっているだろうか。
「……まぁ、頑張れよ」
無理はするな。
その言葉は胸の中だけに留めておいた。
〜つづく〜
四話目です。
私はしっかりとキャラ同士の人間関係をかけているでしょうか。
不安です。