複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を(略)同じような小説書いている方アドバイス下さい! ( No.66 )
- 日時: 2012/05/13 13:44
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: TRpDG/gC)
6・赤。
朝起きてから、いつものように朝食が持ってこられるまでの間、道路を見下ろした。
私の屋敷の前の道路は比較的治安が良く、人通りが多い。
それでも、やはりスリなどの犯罪も決して少なくはないので、皆ぴりぴりしている。
そんなに張り詰めて生きていて、楽しい?
みんな、何のために生きているの?
私は誰かに聞いてみたい。
貴方の生きがいって何? それは苦しくても、悲しくても、嫌でも生き抜いてでも味わいたい物?
それを聞いて、私はどうするつもりなんだろう。
参考に? バカな。
私が人生において誰かのようになりたい、何て絶対一生思わない。
絶対だ。
だって私はもう、自分の人生に終わりをつけている。
私の人生はもう終わっている。
終わりに向かって歩いているだけだ。
ただ、それだけ。
そんなくだらないことを考えながら、私は虚ろな瞳で人々の生活を眺めていた。
皆、生きている。当然だ。
大体毎日通る人の顔はおぼえた。
ここからは離れているけれど、私はそんなに視力は悪くないので顔は見える。
その代わり今日初めて来る人の顔は憶えられない。
でもソイツは違った。ただ1人、目立っていた。
だって、赤いきぐるみを着ている。
きぐるみは猫のような姿をしているようだが、尻尾が二本生えていて、悪魔のような羽が背中から生えていた。小さくて飛べそうにもないが、それよりもきぐるみには人目を引くある特徴があった。
赤。赤。素敵な赤の色。
きぐるみを着ている人が居るのは珍しくないけど、その綺麗な赤の色に私は見とれていた。
一体どんな奴が着ているんだろう。
私は気になったがあまり追及しない。自分の興味に興味がないからだ。
ソイツはなれない動作で、子供に向かって風船を配っている。
おどおどしているが、それでいて近寄りやすく、ソイツの周りには常に子供が張り付いていた。
「何だ、アレ」
「お嬢様……?」
つい口に出していたというか、朝食を持って来ていた若いメイドに気がつかなかったらしい。
私は途端に恥ずかしくなって声を荒らげた。
ついでに布団もばさばさ動かした。
「なに聞いてるの!? 用が済んだなら、さっさと出てけって! クビにするよ!?」
私の行動が少し意外だったのか、若いメイドはしばらく目を丸くして硬直した後、口元を押さえて礼をした。
礼儀がなっていなくてカチンと来た。
本当にクビにしてやろうか。
「も、申し訳ありません……」
今、笑ってなかった?
気のせいだよね?
あの赤いきぐるみは明日も来るだろうか。
+ + + +
「なぁ、本当に気をつけろよ」
今日は少し気分がいいらしいライアーが、部屋着のまま私をホテルの外まで送ると言い出したので、丁重に断っておいた。
それでも強情なライアーは聞かず、結局部屋の外までの見送りになった。
まぁ、このくらいなら、迷惑じゃないよね?
ドアに少し体重を預けている姿はやはり少し弱弱しく、アスラが凄く強かったことが伺えた。
大切な人の仇って言っていたけれど、もしアスラがライアーを危険な目に会わせたら、私だって。
私だって……?
「おい?」
「あ、いや。なんでもないです。大丈夫です。頑張りますね」
私だって、なんだろう。気になる。分からない。私って私のことちゃんと理解していない。
しっかりしないと。
それより私はあの女の子のことが気になる。
鋭い目つきで2階から道路を見下ろしていた、あの子。
何がしたいのだろう。
あの子は大丈夫だろうか。何となくそう思った。
元気がなさそうだった。何かを失った顔をしていた。とても疲れた表情をしていた。
何があの子をそうさせるんだろう。
私にはそれが気になってしょうがなかった。
「いってきます!」
ともあれライアーに心配されないように笑顔で、私は2日目の仕事に向かった。
ライアーの眉間には皺がよっていた。
〜つづく〜
六話目です。
今回は特に何も無し。
二章は短め予定なのですがこのペースで行くとわからないですね。