複雑・ファジー小説

Re: 赤が世界を(略)おなかすいた ( No.68 )
日時: 2012/05/13 13:53
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: TRpDG/gC)


8・不安。


1日、そわそわするようになってしまった。
なんでかといえば、赤女がバイトを始めたからだ。
なにか問題に絡まっていないだろうか。
ちゃんとやっているだろうか。
変な奴に、絡まれていないだろうか。
色んな不安がたくさんある。

おかしいな。1人には慣れているはずなのに。
なんだか、部屋が広く感じる。
静寂が耳に痛い。

本の内容が頭に入ってこなくて、思わず本を閉じた。
アイツは、今、何をしているだろう。
因みにコレは心配ではなく不安だ。
アイツは何かと抜けているところがあるから、何をしでかすか分かったもんじゃない。

体調は元に戻りつつある。
前までは、あまり身体が思うように動かせなかったけれど、今では殆ど前と同じだ。
もうこの町を離れてもいいだろう。
電車をとらないといけないな。
クエストもやらないと金が心配だ。

いろんなことが山積みで深いため息が出た。


 + + + +


心配だ。
うん。
彼女は大丈夫だろうか。

今日も彼女は窓から道路を見下ろしている。
道路を通る人たちは彼女には気付きにくいようで、誰も気にとめない。
何だよ、みんな薄情だな。
なら、私は心配しすぎなんだろうか。
そんなことはない。
人を心配することはきっと悪い事でも、人に咎められることでもないはずだ。

「…………」

先輩が私の方を見つめているから、そろそろ仕事に戻らないといけない。
でも私はどうもあの子が気になる。
先輩は後で私を叱るだろうな。怖いかもしれない。ちょっと嫌だ。

彼女は私の視線に気が付かない。
私だって、彼女のことを見つめているのに、彼女とは目線があわないのだ。

仕方なく私は仕事に戻る。


 + + + +


不安だ。
何だ、アイツ。

赤いきぐるみは私のことをじっと見つめていた。
正直、怖い。

頭、大丈夫なのかな。

「お嬢様、検査の時間でございます」

「うん」

「え」

窓の外を見ながら答えたら間違えた。
うっかりしていた。
急いで振り返り、驚いているメイドの顔を直視した。
いやらしく口角も上げてやった。

性格悪いな、私。

「あ、ウソ」

眉をひそめるメイドたちなんて見ないで、私はまた窓から道路を見下ろす。

赤きぐるみは居なくなっていた。

日が暮れようとしていた。


〜つづく〜


八話目です。
今回は短め。
最近文が出てこないですね。
こまった。