複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を(略)色々募集してます(´・ω・`) ( No.70 )
- 日時: 2012/05/13 14:03
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: TRpDG/gC)
10・友達。
受話器を下ろすと、薄い綺麗な青の瞳が俺を見上げていた。
いつの間に俺の側に着ていたんだろう。
全く、狂わしいほどに愛らしい。
俺はお前を放したりなんかしないよ。
そんなことが言いたくて、その小さな身体を抱きしめた。
なぁ、何て細い身体なんだろう。まるで板だな。
もっと綺麗だけどな。
「ねぇ、誰?」
それを理解しているのか、していないのか、分からないけれど、何となく嫌がるように俺の腕の中で小さな体は身を捩る。
でも絶対に突き飛ばしたりしないんだよな。
肩に顔を埋めると、シャンプーの匂いと共に彼女の儚い匂いがした。
「んー、親友以上知り合い以外」
少し喉が動いたから、ちょっと笑ったんだろう。
見たかった。
「なにそれ」
俺はさっきまである男と話していた。
特に興味はないが、話していても苦痛ではないので時々話す程度の仲だ。友達? 似合わなくて反吐が出そうだ。
でも、ちょっといいかもな。
友達、ねぇ。
「何話してたの?」
なんて言ったらいいのか。
今のは、俺がただ単に暇つぶしとしてかけた電話だ。
雑談?
いや、違うな。
確かに話題があった。
「俺の親友以上知り合い以外は、人探しをしているんだよ」
「うん」
人探しというよりアイツにとっては、暇つぶしかな。
俺みたいだ。
俺ほど嫌な奴じゃないけどな。
アイツは芯は良い奴だ。
おぇ。
俺らしくねぇ。
「その調子がどうかなって聞いただけ」
突然、細い腕が俺の背中に回ってきた。
そんなことをされたのは、初めてだったか。
あんまり、覚えてないな。
でも、こんなことをされたなら覚えているはずだから初めてだ。
保証はしない。
「なんかね、」
彼女の手は指先まで力が入っている。
「ジャルド、普通の人みたい」
たしかにな。
俺もそう思っていたところだ。
+ + + +
「んぁ?」
本当に申し訳ないことは分かっていた。
だけど部屋をとび出してきたのはいいものの、行くあてがなかった。
無計画だった。
「本当に申し訳ないんですけれど……」
もう日は落ちているので、会社は暗くなっている。
それでも何故か社長は会社の中にいた。
鍵もかけず、1人で。無用心だ。こんな都会で。私も前まではそうだったけれど、何となく都会という物が分かってきた。
私が想像していたのはもっとテーマパークのような、にぎやかな場所なのに。なんか違った。
「ん?」
社長は何かの書類を机の上に残したまま、私に近づいてくる。
「ここで寝てもいいですか?」
私の言葉に驚いたのか、一瞬笑顔をはがしたが、また目を細めて笑った。
社長の笑顔は馴れると、とても親しみやすくて、安心できる。
「いいよ。なんなら俺も居るよ。1人じゃ嫌だろ」
社長はそう言うと私の頭を撫でて手を引いてくれた。
ソファの私を座らせると私の隣に腰掛ける。
やっぱり、背が高い。
座っていても分かる。
社長は再び書類に目を落とし始めた。
内容を見ても分からないので、ぼーっとしていたが次第に瞼が重くなってきた。
「寝ててもいいよ。何があったかは聞かないから」
それは、助かる。
なんか自分が嫌だ。
きっと今ライアーはうんざりしている。
突然部屋を飛び出したんだ。
ライアーは何て思っているだろう。
私も、なんで飛び出してきたかはわからない。
多分、ちゃんと答えてくれなかったのに勝手に腹を立てて、落ち込んだ。
なんて、子供なんだろう。
それに比べて社長は、こんな遅くにきた私なんかを気遣ってくれている。
「社長……」
すごく、眠い。
瞼が張り付きそうだ。
私、駄目なやつだな。
「なぁに、雪羽ちゃん」
「ありがと、ございま、す」
なんとか搾り出してから、瞼を完全に下ろした。
社長に寄りかかってしまっていることなんかに、気が付かなかった。
「……おやすみ」
〜つづく〜
十話目です。
記念すべき十話目なのに方向性がいよいよわからないよ。
社長でてきすぎじゃね?
当初の予定と違うよ?