複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を(略)参照400だから好きなもの晒す ( No.75 )
- 日時: 2012/05/14 17:17
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: JSuMRn8G)
14・行為。
わたしのうえでおとうさんはないている。
わかっている。
こわくてたまらなかったけれどいまではもうどうでもよかった。
いたい。
でもかんかくがうすれてきてもういいやっておもった。
へんなかんじがして、いやで。
でもおとうさんはずっとあやまってないているからもうそんなかおしないでほしくて。
わたしはただむりやりわらおうとした。
かなしくないのになみだがとまらなくて。
それをみたおとうさんはまたかなしそうにして、わたしのかみをなでる。
「ごめんな、ごめんな」
あやまらないで。
そういいたくてものどがうまくならない。
どうすればいいの。
わたし、おとうさんをなかせたくない。
おとうさんはまたそうしてこしをふりはじめる。
つらくて、おなかがおもい。
くちがうまくしまらない。
したをみるのがこわい。
じゅぶじゅぶおとがする。
みみはふさがない。
きっとおとうさんがかなしむから。
わたしはただおとうさんをみつめて、むりにわらえばいいの。
じゅぶじゅぶじゅぶ。
+ + + +
「いいですよ」
すんなり出した言葉に、社長は驚いたように目を見開いた。
少し眼鏡がずれる。
私の言葉が意外だったようだ。
社長は咳払いをして眼鏡を指で押し上げた。
「雪羽ちゃん。もっと恥ずかしがらないの?」
顔を近づけてくる社長に動じずに、私は社長の目を見つめ続ける。
この人、人に顔を近づけるのが好きなのかな。
「え、はい」
別にその程度、どうってことない。
抱くというのはアレだろう。
『アレ』だろうが、私は驚いたのは社長が私に『ソレ』を持ちかけてきたことだ。
そんなに、女の人に飢えているようには見えない。
それにこんな町だ。
そういうことをしてくれる女性は、金さえあれば幾らでもいそうだ。
別にそんな社長に嫌悪心も抱かない。
人間の、いや、動物の自然な欲求なのだから。
「……意外だな。連れって恋人でしょ? なら、断られると思ったんだけど」
首を傾げていた私は今度は目を見開いた。
あぁ、この人、凄く優しい。私のこと、心配してくれているのか。
連れは決してそういう関係ではないけれどやんわりと、私の居場所がここではないことを、教えてくれたのだ。
私は嬉しくなってそっと目を細めて笑った。
「……ありがとうございます」
社長は再び私の髪を指ですくと私から離れた。
そして机の上のコップを手にとって一口啜る。
「で? 雪羽ちゃんさ、初めてなの? そういう商売やってたわけ?」
ずばずば聞いてくる人だな。
なんかそこまで遠慮がないと逆にすがすがしい。
ここまできて隠すのは悪いと思い、口を開く。
別に、隠す必要なんてないし。
「いいえ。そういう商売はやったことありませんよ。でも初めてじゃないです」
社長の後ろにある時計を見ると、そろそろ出勤時間だ。
早くこの話は終わらせないといけない。
社長も暇じゃないだろうし。きっと忙しいだろう。
「へぇ。初めての相手は?」
「お父さんです」
がしゃん。
音がして驚いた。どうやら社長がコップを落としてしまったようで、中身が床に散乱する。
後で私が拭いておこう。
そう呑気に思ったが、今は動ける雰囲気ではない。
社長は、眉を寄せた困惑した表情で、私をしばらく呆然と眺めてから顔を伏せた。
申し訳なさそうに。
「あ、気にしないで下さい。トラウマでもなんでもないので」
きっとお父さんにはお父さんなりの考えがあった。
お母さんもきっと分かってた。
家族で私をどうするかの話し合いが、きっと行われたのだ。
ソレの結果がアレならば私には逆らう権利はない。
私のことを思っての行為なのだ。
アレはきっと。そう願う。いや、確実にそうなのだ。
私を守るために。
結果的には逃れられなかったけれど、それでもしっかり愛は伝わったのだ。
私は、愛されていた。
みんなに。幸せだった。
今でも。幸せだ。
今、こうして生きているのが信じられないくらいに、私は幸せ者だ。
「……そ、う。ごめん」
気にしなくてもいいって言ったのに、社長は私のことをちらちら伺いながら謝ってくる。
本当に優しい人だと思って、私は苦笑いをそっと漏らした。
〜つづく〜
十四話目です。
設定が決まったので忘れないうちに。
R指定?
下ネタ?
いいじゃないか!そんなん!
皆もっとフリーダムに小説書こうぜ!