複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を(略)参照400だから好きなもの晒す ( No.76 )
- 日時: 2012/05/14 17:22
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: JSuMRn8G)
15・言葉。
今日の赤きぐるみの元気が無いことは明白だった。
赤きぐるみは、いつものように駆け寄ってくる子供たちを構っているが、やはり私には分かる。
無理をしている。何か隠している。何を? アイツの日常生活にきっと何かあったたんだ。アイツの気分を害するような、落ち込むような何か、事件が。
なんだろう。凄く気になる。ただの好奇心で心配というわけではない。
でも、苛々する。
何だよ。変なの。もっと元気出せよ。なんか、落ち込んで。暗くて。そんなの、お前じゃない。お前に似合わない。
私がアイツの素顔を、性格を知っているわけではない。
ただ、勝手に自分が抱いているアイツのイメージを、押し付けているだけだ。
でも、なんか、誰にも相談していないんだろ。どうせ。
そんなはずないか。アイツは私とは違う。私とは。
私と、何が違うんだ。
前向きに生きていること? 真剣なところ?
いや、真剣にやっているかどうかなんて、誰にも分からない。
きぐるみを着ているのだから。
でも、相談はしないといけないんじゃないか?
だって、相談をすれば心がある程度楽になるだろ。少し、心が晴れるだろ。解決策が見つかるだろ。
って。私は何様なんだ。私だって誰にも相談していないじゃないか。誰にも相談しないで、勝手に人生諦めて。みんなに迷惑かけて。心配もかけて。
そんな私がアイツに、顔も名前も知らないアイツに何か指示ができるのか?
出来ない。きっと出来ない。
でも。
「……クソッ」
やりたい。
元気付けたい。何かあったのか、本当にあったのかまったく分からないけれど、何か悩んでいるなら。何か人生つまずいているなら。
前を向いて欲しい。生きて欲しい。楽しんでもらいたい。
私のように、私のように、ならないで欲しい。
私はベッドから跳ね起きて、机の引き出しを開けて紙とペンを出した。
長い間字を書いていないので、へなへなの字だったがそれでも書いた。
私の言いたいことが伝われば、それで良い。
私は書き終えるとペンを投げ出して、窓を開けて赤きぐるみに向けてその紙を放った。
+ + + +
あたしはレッドライアーに肩を貸しながら、町を彷徨っていた。
もう随分と辺りは暗くなってきたし、帰ろうと先ほど提案したが、決してレッドライアーは首を縦に振らない。頑固だ。
もっとめんどくさがり屋だと思っていた。
でもそろそろ危ないと思う。
治まりかけていた息はどんどん上がって来ているのだ。
レッドライアーは、あのバカを見つけるまで帰らない気のようだが、そうも行かない。
自分の体の心配も少しはして欲しい。
かなり面倒見がいいようだ。
「ねぇ、大丈夫?」
休憩を兼ねて立ち止まろうとしたが、レッドライアーは構わず進もうとする。
疲れているはずなのに、目からは光が消えない。
相当あのバカが心配のようだ。
心配。かぁ。認めなさそうだな。
「こんなに闇雲に探したってしょうがないよ。もう宿に帰っているかもしれないわよ」
するとレッドライアーが立ち止まる。
私は驚いたがすぐに同じく足を止めた。
今まで何を喋らなかったが、漸くその堅い口を開いて、私の耳元で囁くように声を発した。
「そうだな。赤女はバカだから、あそこしかいけないよな。だよな。きっと帰ってるよな。そうだよ。きっと、居る。帰ってる。大丈夫、大丈夫」
繰り返し、自分に言い聞かせるようにして呟いた後、レッドライアーの息はやっと整ったようだった。
それが強がりでも、レッドライアーに戻った気がする。
今日は星が良く見える。久しぶりに空を見るとすごく綺麗だった。
〜つづく〜
十五話目です。
ちょっと前進。やっと前進。
やっぱり二章は短めですね。
自分の中では終わりが見えました。