複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を(略)参照400だから好きなもの晒す ( No.77 )
- 日時: 2012/05/14 17:27
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: JSuMRn8G)
16・心配。
本当に、大丈夫なのか。
いや、アイツじゃなくて、俺。なんか凄く変だ。
アイツに何かあったら困る。とかじゃない。いや、俺、何が言いたいんだろ。
とにかくアイツを早く見つけないと、変になってしまいそうだった。
何か、変。ダメだ。こんなんじゃ、ダメだ。
もっと別なことを考えよう。
そうだ。
これから。これからのこと。
もちろん、アイツ等の事は追う。追ってどうするか決まったわけではない。
でもなんだか一度決めたんだ。
アイツ等は始末しないといけない。アイツ等は危険だ。世界に悪影響しか及ぼさない。
だから、俺が追って捕まえて、消さないと。
それで? いつこの町を出ようか。
だって全然アイツ等の話は聞かない。
どれくらいの被害が出たとか事件とか。
だから、もう少しここに残ってみよう。
こっちの方向に来たのは間違いないのだ。
仲間を1人でも、捕まえることが出来れば、ソレは大きな成果だ。
ここにもう少し残るとして。
それで。赤女は。赤女はどうしよう。
ついてこさせるのか?
アイツ等は危険だ。赤女なんて連れて行っていいのか。
いや、それ以前に。
アイツは、アイツは見つかるのか。
もう会えないんじゃないか。会えなかったら、どうしよう。
これから1人でアイツ等を追うのか。
1人で。1人。慣れているはずだ。
赤女に出会うまでは1人だった。
だから、何だ。この間まで赤女が居て、1人じゃなかった。
それは、辛い。1人は、辛い。可笑しい。こんなの俺じゃない。俺じゃ。
頭が痛い。耳鳴りがする。
頭が。耳が。痛い。痛い。
「ぁ! ……ライアーさん!」
耳、が。
アレ。痛くない。嘘のようだ。身体が軽い。顔がすんなり前を向く。
居た。居る。道路の真ん中。赤いホテルの前。立っている。
赤いジャージで。いつものように。俺を待っているみたいに。
立って、申し訳なさそうに表情を曇らせて。
美しい黒髪と、黒目。
あぁ、良かった。見つけた。やっとだ。やっと会えた。漸く。本当に良かった。
足が。踏ん張れる。自分で歩ける。前に進む。
赤女も俺に近づいてくる。
まるで、もう何百年もあっていなかったようだ。久しぶりに見る。
目頭が熱い。
本当に良かった。情けないから、泣かない。
本当に。心配、心配かけやがって。
ためらう事なく、赤女の身体を抱き寄せた。
俺、変だ。やっぱり変だ。
でも、分かった。
変なのはきっと、コイツの、赤女のせいだ。
コイツは俺の中で小さなものだ。存在価値は低い。
なのに俺を可笑しくする。どうして。本当に、むかつく。
「……ごめんなさい。迷惑をお掛けしました」
赤女の腕が俺の背中に回って俺を抱きしめ返す。
そこでやっと息を吐き出した。
心が満ちていくような感覚。
「……まったくだよ」
何でこんなにコイツのことで、真剣にならないといけないんだ。
どうして。コイツなんか全然俺はどうでもいい。
そうだ。そのはずだ。だから、疑うなよ。
赤女は俺をそっと引き離すと、ふかぶかと頭を下げた。大分後悔しているようだ。
もっと後悔しろ。反省しろ。
こんなに俺を可笑しくさせやがって。どれだけ歩き回ったと思ってる。
ミーニャが後ろでくすくすと笑っているが、きにしない。
多少頭に来るが、後で殴る。いや、殴らないかも。
だってコイツとはもうお別れだ。きっと。
この世界は広い。
誰かと再会するなんてまぐれか奇跡だ。
だからコイツとはもう会わないと思う。いや、会えない、か。
いやでも不思議とそれを疑っている自分が居る。
本当に、会えないのか?
そんなのはまぁ分からないとして。
「や、え、お姉さん!?」
顔を上げた赤女はとても驚いたようで一歩下がる。
オーバーリアクションだ。
「なんか、申し訳ないです! でも、また会えるなんて運命ですね!」
運命か。
それもあるかな。
そんなものがあったって別にいいだろ。
だって、この街は暗すぎる。
〜つづく〜
十六話目です。
今回は何処できろうか迷いに迷ってこんなところで終了。
あと少しで第二章はオワリ。
二十話目くらいでオワリかもしれないです。
第三章は、どうかな………………。
未定です。
話は決まってます。