複雑・ファジー小説

Re: 赤が世界を(略)参照400だから好きなもの晒す ( No.79 )
日時: 2012/05/14 17:34
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: JSuMRn8G)


18・激励。


そうだ。これからのこと。私は何も考えていなかった。
考える暇がなかった。
初めての仕事。そしてライアーとの喧嘩。
いや、喧嘩というより私が一方的に拗ねただけだ。
そのことはまた改めてライアーに謝らないといけない。説明もしないと。
でも、イマイチなんで自分があんな行動をとったかはっきりしない。
ちゃんと話を聞いてくれないのに拗ねたのだろうが、もうライアーがそういう性格だということは分かっていたはずなのに。
言い訳はよくないから正直に話そう。

それで私はどうすればいいんだ。
さっきの行動からみて、ライアーは怒っていないようだ。
でもまだついていっていいのか?
そもそもどうして私は、ライアーについていっているんだ?
ハラダ・ファン・ゴの弁償のため?
だってそれはお姉さんの言うとおり、あの武器が偽物だったのだから折れたのは私のせいじゃない。
だとしたら、私がついていく必要はないはずだ。
ライアーも私に、どうしてもついてきて欲しいというわけじゃなさそうだし。そんな素振りは見せたことがない。
それにしてもあの偽物の事件は酷かった。
ライアーの左手もあの事件のせいだ。いや、アスラのせいか?
でもアスラが本当に悪いのか?
アスラは私を狙っていた。どうしてだろう。そこのところをもっと彼と話してみたい。
どうして私を狙うのか。
でも聞いてどうするんだ。
私が彼の大切な人に何かしたとして、謝るのか?
身に覚えのないことだったら? 私以外の別人だったら? 彼を攻めるべきか?
お前のせいで、ライアーが大変な目に合った。
言葉をぶつけてそれで満足なのか。
そんなこと、私はしたくない。

じゃあ、私は一体、何がしたいの?

「俺はこの町にもう少し居る。調べたいことがあるんだ」

私が悩んでいる時に口を開いたのはライアーだった。
調べたいことってなんだろう。
そんなこと、私にには言ってくれなかった。
その調べたいことのために、この町にわざわざ来たのだろうか。
どうして私にには言ってくれないんだろう。
一応、連れなのに。
連れ、だな。仲間じゃない。友達でもない。意味の分からない関係。私たちは一体なんだ。

最近、悩み事が多い。
いろんな人に迷惑をかけているのには気付いている。
今日だって社長に迷惑をかけた。
無理矢理仕事に出た。
だってあのまま帰るなんて出来なかったし、ライアーの居るかもしれないホテルに帰るのが嫌だったんだ。
我が儘すぎる。嫌になる。

「へぇ。バカは?」

ライアーの言葉を受け流したお姉さんが、私のほうを見つめた。
本当に綺麗な青い目。
それに全て不安を吐き出したくなる。弱音が零れそうだ。

私は、これからどうすれば? 何をすれば? 何がしたい? 何が出来る?
進歩しない自分が嫌です。我が儘な自分が嫌いです。バカで、目障りな自分なんて早く消えれば良い、なんて思います。
誰かが励ましてくれるのを待ちました。誰も来てくれないのが普通でした。
でも、でも、今は心配してくれる人が居て。励ましてくれる人が居て。待ってくれる人が居て。
私、もし1人になったら立ち直れないかもしれないんです。
温かすぎて、怖いんです。

「私、私は」

「俺と一緒にこの町に残る」

最低。最低だ。
私は口ごもった。黙った。ライアーの言葉を待った。私で、自分で決めようとしなかった。自分はどうすればいいのか、考えなかった。
最後の判断をライアーに任せて、責任から逃れようとしたんだ。
最低だ。本当に、駄目な奴だ。しっかりしろよ。何も進歩しない。
こんなんじゃ、いつかこの熱を、温かさを、離してしまう。
そんなのは嫌だ。絶対嫌だ。
まだこの熱に浸っていたい。

「…………」

椅子に座っている自分の両足の上で、両手を握り締めると、ポケットの中にある何かに触れた。
あまり身体が動かないようにして、中身を引っ張り出す。
それは小さく折りたたんだ白い紙だった。
私は、この紙を知っている。中に何が書いてあるのか知っている。

そうだ。私は。頑張らないと。折角彼女が。

「あの、調べたいことってなんですか?」

『楽しく生きろ! バカ!』


〜つづく〜


十八話目ですね。
今回長め。
少しずつ誤字修正してます。
今日は時間がないのでしませんが、鑑定をしていただいたのでurl貼りますね。
ラストスパート頑張ります。
終わったら色々言い訳すると思います。