複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.80 )
- 日時: 2012/05/14 17:38
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: JSuMRn8G)
19・疑問。
黙っているのは私じゃない。
気になることはすぐ言うべきだ。
そう考えるのが私だ。そうだ。
楽しく生きる。それは大切だ。
人生に悩みとか、不安はつき物だけどそれは自分の行動によって何とかできる。
今は、できるとき。
だから自分の疑問を正直に、遠慮しないで言うべきなんだ。
さっきは、罪悪感が邪魔していたけれど、この紙の言葉に励まされた。
大丈夫だ。
私は私らしく、楽しく、生きる。それでいいじゃないか。
そしてみんなも、楽しく。それがベストだ。
「……あたしも気になる。大体アンタが、何かを目的に行動しているようには見えなかったわ」
少し驚いた表情で私を見つめていたお姉さんも、賛同してくれた。
そして、お姉さんの言葉にライアーの眉が一瞬動いたのに気付いた。
どうかしたのだろうか。お姉さんの言葉が引っかかったのだろうか。
私にも、ライアーが何かを目的にしているなんて見えない。
そんなこと仄めかせることもなかったのに。
「……カーネイジ・マーマンって聞いたことあるか?」
ライアーは目を閉じて、椅子の背もたれに背中を預けた。
あきれたように鼻で息を吐き出してから目を開いた。
赤い目は真っ直ぐに私を捕らえている。
「カーネイジ・マーマン?」
私は聞いた覚えのないその言葉を繰り返してみる。
だが、その言葉を聞いた記憶は無い。
思い出そうと、精一杯に記憶の糸を手繰り寄せるが、何も浮かんでこなかった。
そんな私の反応とは裏腹に、隣でお姉さんが息を飲む。
心当たりがあったのだろう。
隣を見るとお姉さんは、目を見開いてライアーを見つめていた。
ライアーは私を見つめているため、視線が交わることは無い。
「まさか……アイツ等を追っているの?」
ライアーは再び目を閉じて頷いた。
頭が追いつかない。
カーネイジ・マーマン? 人の名前だろうか。
それは無いな。だってお姉さんは『アイツ等』と言った。つまり複数だ。
なら、団体の名前? いちいち名前をつけるものなのだろうか。
ギルドでもあるまいし。
お姉さんが知っているということは、裏の世界の人間?
お姉さんは泥棒なんだ。裏の世界に詳しいのにも納得できる。
カーネイジ・マーマン。
「すみません……なんですかそれ?」
私は、パンケーキの最後を飲み込みながら首を傾げた。
ライアーが目をこする。
そうか。眠いのか。随分と心配をかけたようだし。あんなに心配されるなんて思ってもみなかった。
「それは直に分かる。俺も大分回復したし、お前はもう働かなくていいぞ」
そう言うと、これ以上何も話したくない、とでも言うようにライアーは立ち上がった。
お姉さんが小さくやれやれと呟いている。
本当に、この人にも迷惑をかけた。
悪い事なのかもしれないが、私の心はもう落ち着いていた。
久しぶりに笑えるかもしれないと思った。
〜つづく〜
十九話目です。
次で二章最終話かもしれません。
二章で一番書きたかったシーンが出ます!ワクワク。
小説を原動力はこれですね、書きたいことを書く!