複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。【二章完結!ぐへへ】 ( No.82 )
- 日時: 2012/05/24 18:35
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: wDvOBbcg)
1・これは良かった。
少しだけ開けた窓からは、ほのかな煙のニオイをまとった風が入り込んできていた。
不快では無いのでそのままにしておくと、段々と煙のニオイと共に血のニオイもしてきた。
どこか遠くで誰かと誰かが争っているんだ。
そうに違いない。俺の鼻はよく利くから。いや、そうでもないか。
きっと気配とかに一番敏感なの、は馬車を走らせているこの男だ。
さっき、俺が代わると言ったのに、決して手綱を俺に譲らなかった。頑固だ。
あの男は俺を信用していない。そろそろ旅にも慣れてきたのだから、もっと喋るようになってもいいと思う。
それにしても暇だ。無口なあの男とは会話が成り立たない。
俺は積まれていた布袋に寄りかかった。
この馬車はきっと何か作物を運んでいたんだろう。
だとしたら、この馬車の持ち主のおじさんは農家の人間ということになる。
大変だったろうな。毎日毎日畑耕すだけか。暇じゃなかったのだろうか。
まぁそんなことこれから心配しなくて良くなったんだ。あのおじさんは。
何せ、もう身体は動かない。呼吸さえ出来ないのだから。
「なぁ、暇じゃねぇ?」
たまらずに吐き出したその言葉は、鳴り響いているひづめの音よりも良く通った。
証拠に、フードを目深に被った男が少しだけこちらを向く。
俺はコイツの顔を見たことがある。それはとても奇怪であったがそれは言ってはいけないことの様に感じた。
この男にとっては顔はコンプレックスなんだ。
かく言う俺もフードを被っている。
顔を隠したいわけではない。
別に顔は見られたって良い。
だが、俺たちは世間で言う殺人鬼なわけだから、極力避けたい。
それだけだ。
俺のは別にコンプレックスではない。
「そうか。なんだかお前は子供っぽいな」
男は俺を鼻で笑ったが気にならなかった。
言葉を返してくれただけでよかった。
「んなことないだろ。お前等が大人っぽいんだよ」
口にしてみてここには無い2人の顔が脳裏をちらりとよぎる。
そうだ。2人とも元気だろうか。
しっかり合流しないといけない。俺たち2人がアイツ等を探してやらないといけない。
あの変な赤髪に追いかけられて、俺たちは大変な目に合った。
その時にやむなく二手に分かれたのだ。
それにしても心配だ。アイツ等はしっかりしているが油断は禁物だ。
「なぁ、アシュリーたち、元気かなぁ?」
元気だと良い。
俺たち2人がここに居て、後2人は行方不明。
あちらの2人はあまり戦闘が得意では無いから、ビーストに襲われたりしたら大変だ。
こんなこと言ったらパルが怒りそうだ。アイツは負けず嫌いだから。
「さぁ……。俺には分からないけど、でも、元気だと良いな」
そういうコイツに安心している俺がいた。
なんだコイツだってアシュリーとパルのこと、心配だったのか。
てっきり、どうでもいいなんて考えているんじゃないかと思っていた。
そうじゃなかった。コイツにだって仲間を思いやる心はあるんだな。
〜つづく〜
第三章スタートです。
今回は雪羽ちゃんとライアーさんは出てこないかもです。
この人たちメインになるかな。
キャラが被らないように頑張ります………。