複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。【二章完結!ぐへへ】 ( No.83 )
- 日時: 2012/05/24 18:39
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: wDvOBbcg)
2・情けないよ。
「雪だ」
ビーストに襲われて、壊れてしまったゴーグルを脱ぎ捨てながら空を見上げると、白く細かい物が降り注いできていた。
確かに一昨日くらいから、急に気温が下がってきていたから、もしかしたらとは思っていた。
私と彼は寒いのになれていない。苦手だ。早く寒いのが過ぎ去ってしまえば良い。
それか休憩の量を増やして、じっと冬が過ぎ去るのを待つしかない。
でもそれは避けたかった。
私と彼は止まるわけにはいかない。
いつあの赤髪がやってくるか分からないのだ。
油断は絶対にしてはいけない。
私が責任を持っている。
もし、彼等に何かあったら、私はどうしたら良いか分からない。
私が彼等を守らないといけない。
彼等が捕まるようなことはあってはならない。
「少し休むか」
私の少し前を歩く彼は立ち止まって私を振り返った。
彼も寒いのは苦手なはずなのに堂々としていた。
彼は誰かに弱みを見せることが嫌いだ。負けず嫌いだから。
そんなちょっとだけ見せる子供らしさは彼の愛嬌だ。
一番歳は低いはずなのに、しっかりしていた。
頭の回転も速くて、私も時々頼りにしてしまうほどだった。
本当はこんなことではいけない。
私が彼等を引っ張らないといけないのに、いつも助けられてばかりだ。
私は、弱い。力も、意思も。何もかも。
変えないと。変わらないと。
そう分かっているのに、動けない。進めない。
「どうしたんだ? 傷が痛むのか、アシュリー」
彼は心配そうにしながら、私に歩み寄って私の右の米神をそっと撫でた。
さっきビーストに襲われた時のものだ。
その時にゴーグルも壊れてしまった。
傷は彼の医術でふさがったが、彼の医術は完璧では無い。
どちらかというと魔術のほうが得意だった。
医術と魔術はどこか違うのだと言う。
医術は魔術の応用だが、医術士が必ず魔術を使えるとは限らない。
その辺は良く私にも分からない。
彼は私の傷を塞いで、血が出ないようにはしてくれたが、痛みは消えなかった。
私は彼の頑張りを無駄にしないように笑って見せた。
「大丈夫。ありがとう、パル」
私は彼の掌を包み込むように握った。
酷く冷たくて暖めてあげたかったが、私の掌も冷たくてどうにもならなかった。
少しだけ痛みが消えていたので、多分今の間に医術をかけ直してくれたのだろう。
少しなら痛み止めの医術も彼は出来るようだ。
「それにしても、銀たちは元気かな」
途中ではぐれてしまったあの馬鹿のことを思い出す。
アイツはとんでもなく馬鹿で、どうしようもないがムーヴィと一緒のはずだから、危険な目には会っていないと思う。
ムーヴィは冷静だから。一番の大人だ。
「平気だよ。銀はともかくとして、ムーヴィが一緒だし」
パルもそう考えていたようでそういいながら微笑んだ。
彼が笑うなんて珍しい。
余程このメンバーのことを気に入ってきたみたいだ。
柔らかな彼の笑顔に、安心させようとしていた私が安心してしまった。
そう。彼等ならきっと大丈夫だ。
〜つづく〜
二話目です。
この子達はまだキャラが安定していません。ガタガタです。
動かしにくいです。