複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。【二章完結!ぐへへ】 ( No.85 )
- 日時: 2012/05/24 18:46
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: wDvOBbcg)
4・驚いた。
重たい瞼を開けるとそこは草原だった。
煙のようなニオイを含んだ風に、揺れる緑が永遠に視界を覆っている。
「ここ……どこ」
思わず呟いてしまった言葉は、自分以外誰も聞いていないようだ。
今のところ人影は見えない。
夢かと思った。
だってこんな美しい草原に自分が立っているなんて、信じられない。
花が咲いていないことも不自然で、その前に日本にこんな場所があったのだろうか。
ないだろうな。だからコレは夢だ。絶対夢だ。
ところで自分は夢に落ちる前に寝ただろうか。
いや、寝ていない。多分。
じゃあ夢じゃない? いやいやいや。夢じゃないはずがない。
では確かめるために頬を抓ろう。定番だが。
「……痛い」
痛いぞ。なんだコレは。
じゃあ夢じゃない。
なら、ここは何処?
私は誰?
までは行かない。自分の事は分かっている。
自分は確か、車の中で瞬きをしたんだ。そしたらいきなり草原。
トリップ。
そんなバカな。
自分はいたって普通の高校生で、自分が着ている服も学校の制服で、背負っているのは学校にいつも持っていっている小さいリュックサックだ。
お気に入りの青。
そんな自分が草原。
似合わないな。浮いている。
「どうするかな」
なんて呟いてみても解決策は浮かばない。
何をどうすれば良いんだ。
ここが何処なのか分からない限り何も出来ない。
迂闊に動くことさえも。
とりあえず、立っているのは面倒なので座ろうとした。
幸運なことに自分が立っているのは白い砂利が引かれた、道のようなところで草の上に座る必要は無い。
草の上に座るのは少し抵抗がある。
スカート汚れるかもしれない。
帰ったらまだまだ使うし。制服なのだから。
帰ることが出来るのかは不安だけど。
しばらく流れる雲などをボーっと見ていた。
よくマイペースなヤツだと言われた。何を考えているのか分からないとも言われた。
何を考えているわけでもない。自分は何も考えていない。
そう返しても友人は笑うだけだった。
取り消せよと思った。
なんだか貶されている気分だったから。
そう友人との思い出に浸っている時だ。
道のようなところから、何か乗り物がゆっくりと近づいて来ているのが見えた。
まだ小さいが、形は分かる。
アレは多分、馬車だ。
2頭の動物が小屋のような物を引っ張っている。やはり馬車だ。
この道を通る気だろうから私は腰を浮かせた。
近づいてくると馬じゃないことが目に見えた。
確かに馬っぽいのだが、毛がもさもさで耳がない。尻尾もない。
私はその奇妙な生物を思わず凝視した。
気持ち悪くは無いが、気味が悪い。
こんな生物いたのか。
世界は広いな。
馬車は私を通り越さずに止まった。
あれ? なんで?
びっくりして身動きが取れない私の目の前で、小屋の小さな窓が開いた。
「なぁ、こんなトコで何してんだ?」
〜つづく〜
四話目です。
この章の主役(?)登場です。
題名考えるの大変です。