複雑・ファジー小説

Re: 赤が世界を染める、その時は。【二章完結!ぐへへ】 ( No.87 )
日時: 2012/05/24 18:53
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: wDvOBbcg)


6・後悔はするかもね。


「君たちと私が一緒……?」

私がその言葉を確かめるように繰り返すと、銀はうんうんと頷いた。
まるで意味が分からない。私と同じように、この人たちにも帰るところがないのか。
だから、馬車で旅をしているのだろうか。
いや、旅というわけでは無いかもしれない。
窓から少しだけ見える馬車の中は、布袋が積まれているだけで、食料や生活用品などは見えない。布袋に入っているのだろうか。そんな整理整頓が出来る人間には見えない。
ムーヴィならそういうところはきちっとしてそうだ。

「あ、ならお前も一緒に行こうぜー」

「ちょっ、銀、それは……」

初めてムーヴィが困ったように声を大きくした。
今まで落ち着いた雰囲気を漂わせていたのに。そんなに私がついて行くのはダメなのだろうか。別に、どうしてもついて行きたいわけではない。ここに1人残るよりは誰かと一緒に居たほうが良いに決まっている。何より、私はこの世界のことなんて少しも知らない。そこが一番困る。右も左も分からないのだ、私は。

「えー! 良いじゃんかよぉ! お前も一緒に来たいよなぁ?」

銀が私に期待するような、けれど決して首を横には振らせない、という威圧感を篭めた視線を浴びせてくる。

困った。この2人を信用して良いのか。だって仮にも男2人と可憐な女子高生1人。何かあったら困る。こっちで初めてをとられたくない。日本で初めてが良い。初めては大切だ。

とはいっても、なんだかこの2人なら、そんなことはしてこないような気がする。核心は無い。さっき会っただけの仲だ。
でも妙な安心感がある。
きっとこんなところに1人で放り出されて、心細いんだろうな、私。

「どうしようかな。迷惑じゃなければ、一緒に行きたいけど」

「けどぉ? けど何だよー」

銀が窓から身を乗り出して私の髪をいじくり始めた。ぼさぼさになるからやめて欲しい。
そんな銀の変な色の目を見つめる。
本当に、どうなっているのだろうか、この目は。

「……変なことしないでよ」

私が軽く冗談のように言うと、銀の動きが止まった。指の間からはらはらと髪が落ちる。
ぽかんと口を開けたまま、銀の首が傾いた。

「……? 例えば?」

は? え?
何言ってんだ、こいつ。
女の子の口からそんな言葉を出させる気なんて、とんだ変態だ。
やっぱり、一緒に行かないほうが良いかもしれない。

「……まぁ、別に良いか。急いでいるからもう行くぞ」

手遅れだった。後で後悔するかもしれない、もうしている。
いや、もしかしたら銀はそういうことには疎いのかもしれない。明らかにバカな感じだし。きっと、そうだ。そうと信じよう。

「おい、早く乗れ」


〜つづく〜


六話目です。
今回で少し話が進む&キャラを安定させよう。ということでしたが……なんだかなぁ。