複雑・ファジー小説

Re: 赤が世界を(略)参照500なので少しずつ誤字修正 ( No.95 )
日時: 2012/05/13 16:55
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: TRpDG/gC)



11・彼のことを知るのは難しいよ。


俺は、俺たちは、一体何処に向かっているのだろう。
時々、分からなくなる。俺たちの居場所は最初から、生まれたときから存在しない。そんなの、分かっていたはずだ。
でも、最近になって、銀やアシュリー、それからパルに出会って、何となく生きるということが分かってきたような気がする。
生きること、か。何で分かるようになってきたのだろう。
まだ、見えない。俺たちの未来や、居場所、生きる意味。まだボヤーッとしか見えていなくて、実体が無くて、掴めそうも無い。
でも前までの俺だったら、そんなのものって片付けて、探そうとも思わなかったろうに。
何でだろうな。本当に。銀たちが俺の中の何かを変えたのだろうか。俺自身、分からなかった何かを、銀たちが。
最近、胸が痛い。アシュリーとパルのことを考えると、目が冴えて、眠れない。あぁ、俺、心配なんだ。何かあったら、どうしよう。アシュリーかパルが、大きな怪我を負っていたら。心配で、たまらない。
居てもたっても居られない。

だから俺は、あんな女と一緒に行動するなんて、考えたくなかった。だって、足手まといだし。俺たちのことなんて、こんな女に分かるはずが無い。
行く場所が無いだと? ふざけるなよ。俺たちと一緒なんて、そんなこと言うな。俺とあの女は違う。俺たちのことなんて、あの女に分かってたまるか。

どうして、銀もあの女と行きたがるんだ。危なかったら、どうする。アイツの、手下だったら。だって、あんなところに1人で立っているなんておかしい。服も見たこと無いようなデザインだ。

まぁ、いざとなったら、俺が始末するからいいか。
銀はバカで、そして優しい。俺がそんなことしたら、怒るだろうけれど、しょうがない。
俺たちは、生きなくてはいけない。俺はまだまだ生きたい。アシュリーたちに会わないといけない。そのためなら、何をしたって、構わない。
俺は、銀たちを守りたい。世界なんてどうでもいい。銀たちがよければ、俺はそれで。


 + + + +


固い床ではどうも寝れなかった。それに、なぜか眠たくならない。だから私は身体を横にしたまま、目を開けていた。
隣では銀が寝ている。身体を丸めて、小さくなっている。少し寒いけれど、何も身体に羽織る物が無いから、仕方ない。きっと、寒さから逃れようとしているんだ。

そう、思っていた。

だが、かなりの時間が経った時、銀の様子が変なことに気がついた。

「え……?」

馬車の中は暗い。でももう目は慣れているので、驚きながらも、近寄った。
近寄ってみて、その小さくなっている身体に触れようとして、やっぱり止めた。怖い。

銀は体を小刻みに震わせて、頭をしきりに引っかいている。唸るような、聞き取れない声を出しながら。呼吸が荒く、汗も酷い。

なんだこれ。何が起こっているんだ。
寒さから逃げようとしていたんじゃない。怖かったんだ。何かに見つからないように、隠れるために、小さくなっていたんだ。
どうして。コレは、起こしたほうがいいのだろうか。でも、私は部外者だ。銀のことなんて、何も知らない。
そうだ。ムーヴィ。信頼はされていないが、彼を呼びに行こう。彼なら、何とかしてくれる。

私は急いで馬車から降りて、彼の影を探した。
月は雲に飲み込まれていて、辺りはとても暗かった。


〜つづく〜


十一話目です。
久しぶりに更新。
最近は誤字修正をしていました。
一章はすべて、二章の十話まで終わりました。
まだ誤字が残っていましたら、連絡お願いします。