複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を(略)参照500なので少しずつ誤字修正 ( No.96 )
- 日時: 2012/05/13 18:57
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: TRpDG/gC)
12・コンプレックスであり、彼である証。
肌寒い空気が、私の肌を包み込む。私は身震いをしてから、辺りを見回した。ムーヴィは、何処だろう。馬のような生物の側に居ると思ったのだが、いなかった。近くには居るはずだ。
銀の事は別に、心配では無い。ただ、頭がおかしいんだ。そうとしか思っていない。何かの病気なんだ。
私が銀を心配する理由は何処にも無い。今日の昼間会って、これから一緒に居るだけの仲。ムーヴィは私のことを、よく思っていないようだし、すぐに離れるだろう。私だって、1人のほうが気がらくだ。今はまだ世界になれていないから、1人は嫌だけれど、この2人とずっと一緒に居るわけじゃない。自分のことを良く思っていない人間と、引っ付いていたい人間なんて、いない。
だから私は、銀のことをムーヴィに報告したら、すぐに寝ようと思う。寝ないと身体に悪いし。
ちゃんと寝ろって、友人にもよく言われた。アイツ、私のことばっか心配して自分のこと、大切にしなかった。帰ったら、私も言い返してやろう。
お前だってしっかり自分の体調管理しろ。このくらいは言ってやろう。
……?
なんだろう、この胸騒ぎ。
「……あ」
何となく変な感じがして、自分の左胸を押さえた時、草原に1人立っている男の姿を見つけた。
背の高いその後姿は、きっと私が探していたムーヴィだ。でも、声をかけることが出来ない。なんだが、壁を感じる。すぐ側に居るのに、遠い感じがする。まるで写真の中に居るような感覚がする。
変なの。確かに、ムーヴィや銀は変だ。日本人じゃないし。私とは違う。そんなのは分かっていたはずなのに、なんだか見せ付けられた気分になった。空の下で、ムーヴィはフードを外しているようだ。
短い髪が、風で揺れる。暗くてよく見えない。
フードの下のムーヴィの顔に、私の好奇心が疼く。見て見たい。彼は一体、どんな顔をしているのだろう。
目を凝らそうとして、止めた。
ムーヴィが動いて、振り返ったのだ。慣れた手つきで、フードを深く被る。
「何の用だ」
ムーヴィは、声をかけなかった私に不満を持ったようで、苛々しているようだ。声音で分かる。
私は近寄ってくるムーヴィをじっと見つめた。もう顔は見えない。外していたなら、この距離なら見えたと思う。
「何の用だと思う」
「……お前と喋ってると苛々する」
私の意地悪に、ムーヴィは溜息をついた。
「お前は、変だ。なんで俺に近寄らない」
「近寄って欲しいわけ?」
私はムーヴィを促すように、歩き出した。ムーヴィも私の少し後を歩いてくる。
ムーヴィが後ろに居るのは落ち着かない。何かされそうだ。私はかすかに背後に気を配った。
「俺の顔見たいとか……思わないのか」
その言葉に驚いた。
なんだろう。なんか、ムーヴィが弱弱しく感じる。なんだろう。この感じ。まるでムーヴィは自分のことを、理解して欲しいみたいじゃないか。そんな性格には見えない。もっとねじれた性格だと思う。
「どうして私がそんなこと思わなきゃいけないの」
私は首を捻って、ムーヴィを見上げた。そして少しだけ、笑って見せた。
「……気に入らない」
そうしてムーヴィは軽くしたうちをした。
私は笑ってしまった。
〜つづく〜
十二話目です。
今日二話更新です。
なんか書きたい衝動が・・・・。