複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を(略)参照500なので少しずつ誤字修正 ( No.98 )
- 日時: 2012/05/16 16:44
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: 0vNNOux/)
14・見えない鎖、束縛。
怖い、夢を見た。
昔の夢。遠い夢。今でも時々見てしまう、夢。辛い夢。苦しい夢。
俺は、誰かに動きを封じられていて、動くことが出来ない。声も上げられない。じたばたしようとするけど、出来ない。
怖い。怖い。
俺の周りに居る人たちが、笑う。俺の腕をつかみながら、笑う。笑って笑う。俺は怒れない。
怖い。怖い。逃げたい。
でも、分からない。どうしてこんなに自分が逃げたいのか、分からない。何も考えられない。
息が苦しい。
周りの人たちが、何か持ってきて、俺の身体に針を刺す。身体が熱くて、たまらなくて。頭がガンガンして。
痛い。痛い。
やめてよ。声が出せなくて。
目を瞑ろうとすると、殴られる。それが怖くて目を開けていると、怖い物が迫ってくる。俺は、眠りたかった。コレが嘘だって思いたくて。早く、終わって欲しくて。それでも周りの人たちは、それを許さない。
俺の身体に、針を沢山刺したり、指を一本ずつ折っていったりする。涙で頬が濡れる。
暴れれば、みんなが笑う。無様だって、笑う。俺はそれが悔しくて、また涙を流す。
その時に、思い出すんだ。いつもいつも、このタイミングで。
アシュリー。ムーヴィ。パル。
3人の優しい顔が、俺の頭に浮かぶ。
そうだ、俺には、コイツ等が居る。俺を必ず幸せにしてくれる、コイツ等が。だから、大丈夫。そこで心に余裕が出来る。
でも。でも。
いつまで経っても助けは来ない。誰も来てくれない。
どうして。なんで。どうして俺を迎えに来てくれないの。俺は、苦しくてたまらないのに。この叫びが、聞こえないの。
やだよ。やだよ。みんなに会えないなんて、やだ。
ずっとこのままなんて、絶対に。
「そうやって、お前は」
アイツの声がする。アシュリーが教えてくれた、アイツ。アイツのせいで、俺たちは。俺たちは。
俺たちは————?
「いつまでも、お前は」
やめろ。俺に気付かせないでくれ。頼むから。俺は、幸せだから。充分幸せだから。コレだけで、満足するから。頼むから。
俺たちにもう付きまとわないで。
「そのままじゃあ、」
俺は耳を塞いでしまいたかった。気がついていたから。俺はアイツのせいにしたかった。アイツが俺に気付かせようとしているのだと、思い込みたかった。
だから。だから。
『俺は』
俺は、俺の言葉を無視するの。
〜つづく〜
十四話目です。今回はスムーズにかけたかな。