複雑・ファジー小説

Re: 赤が世界を(略)参照500なので少しずつ誤字修正 ( No.99 )
日時: 2012/06/10 13:02
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: ae8EVJ5z)


15・信用という居場所。


俺は、銀を抱けなかった。怖かった。俺が触れてはいけないような、気がした。
どうしてだろう。
俺たちは、仲間なのに。俺は触れてもいいはずだ。いい、はずなのに。俺は、汚れている。
アシュリーならためらいなく、銀を抱きしめて、なだめて、安心させることができたはずなのに。
俺にはできない。俺には。
俺はアシュリーのように強くない。
アシュリーは、強い。俺はアシュリーを信頼している。
アシュリーは強くて、優しくて、きれいだ。銀と同じく。俺は、汚い。汚れている。

「アシュリーをはやく、見つけてあげないと……」

銀はだいぶ落ち着いてきたようだ。
安心したが、どうもあの女は気に入らない。なんだよ、あの態度は。確かに、俺たちとあの女は関係ない。でも、銀はアイツを助けた。
確かに、助けたのだろうか。
あの女は困っていたのか?

あの女は、何者?

俺は外に出たアイツの背中を見つめていた。


 + + + +


夜風が、冷たい。

私は草の上に腰を下ろした。
汚れるなんて考えていなかった。

銀がああなったのはよく分からない。
アシュリーとかパルとかのことも知らない。
でも、信用しているんだと、感じた。
銀にとって、アシュリーとパル、そしてムーヴィがそろって初めてそこが『自分の居場所』になるんだ。

変なの。銀は自分が『自分の居場所』じゃないのか。私は、どうだろう。私は、私のこと信用できているかな。

「なぁ」

気配を感じて振り返ると、そこには銀がいた。
銀はフードをとって、長い髪を風になびかせていた。

「なに?」

私は銀を見ていられなくて、とっさに目線を空に向ける。
月はまた、隠れてしまった。

「お前がムーヴィ呼んできてくれたんだってな」

銀が私の横に腰を下ろす。

やめてほしい。私は別に、銀を心配したわけじゃない。
ただ、気になっただけだ。眠りたかったし。

「ありがとな。俺、もう大丈夫だからさ」

銀の私の髪を撫でようとした手を、そっと振り払う。

なれなれしい。
私は少なくても、銀たちを信用していない。
しちゃいけない。

「別に」

銀は少し寂しそうに、私にふり払われた手を握りしめた。

「俺たちさ、逃げてるんだよ」

「聞いてない」

「でも、知っておいてほしいんだ。俺のこと、心配してくれたし」

その言葉に私は勢いよく立ち上がった。頭がかっと熱くなって、いてもたってもいられなくなったのだ。

「だから!! 私心配してないから! 勝手にそんなこと言わないで!」

銀をきっと睨めつけて、少しひるみそうになった。
銀は私をじっと見つめていた。ちょっと疲れているような顔をして、それでも私から目線をそらそうとしない。
強い、視線だった。

「ごめん。でも、なんで怒るのか分からないよ。俺、バカだし」

そうして、弱弱しく笑う銀に、こっちも苦笑いしそうになってしまった。


〜つづく〜


十五話目です。
pc新しくなりました!
軽い!