複雑・ファジー小説

Re: 黒ウサギ×銀色蝶々 ( No.3 )
日時: 2011/10/18 17:49
名前: 白月 (ID: P6IPfdWt)

 過去は、過ちを繰り返さないためのものだ————。

 俺は、そう思う。


第一話『黒ウサギは幸福たる死を運ぶ』





 ザザザザッ————。

 夕焼けの深い森の中を、真っ黒なものがものすごいスピードで駆け抜けていた。
 いや・・・よく見ると人だ。真っ黒に見えるのは深い森の中を駆けているせいでもあるだろうが……。

 その人間は、黒いコートに黒いズボンにブーツ。極めつけは黒い髪の毛であるということだろう。
 そのため、こんな暗い森では見えにくいといったらこの上ない。

 そして、少しすると森の開けた場所に出た。
 その、出てきた人間の姿はまだとても若く、17、8歳くらいだろうか。

 

 ————と、その場所に出た瞬間、一気に跳躍。


 
すると、片手に携えていた刀を両手に持ち替え、刺突の構えを作る。
 そしてそのまま、地面へとすごいスピードで落下していく。


 そして、地面との距離がどんどん縮まってくると、何か巨大な————うごめく物が見えてきた。
 そして、



 ————ヒュオン、ザシュッ!



 風を切り音とともに肉を突き刺す嫌な音が聞こえた。
 
 
 『ギャォォオォオゥッ!!』


 大気を揺るがすような、決して人が発するものではない、恐ろしい悲鳴が聞こえた。

 人間が刺したのは、異形の姿をした、魔物だった。
 人間を殺し、食らう人々に害なす存在。

 そして、その突き刺した刀を引き抜いた。すると、鮮血が咲いた花のように噴き出した。
 
 それから人間は、自分の何倍もあろうかという魔物を容赦なく切り裂いてゆく。
 魔物も時に対抗して人間を殴りつけようと腕を何度も勢いよく振り下ろす。
 しかし、魔物が攻撃するのはいつもその人間の残像だった。
 あまりにも速すぎて目が追いついていかず、ようやく攻撃できたと思ってもそれは残像に攻撃したに過ぎず、次にコンマの速さで魔物に次々と攻撃が入れられていく。その度に、魔物の悲鳴が響き、鮮血が舞う。
そして、人間は魔物の振り下ろす、当たったら一瞬で潰されてしまうような掌底を身をひねるだけで避けると、一息に跳躍。そのまま、魔物の首めがけて刀を横薙ぎにふるった。
 
 ————すると、その魔物の首は枯れて落ちてしまったひと房の花のように、いとも簡単に、ぽとり。と落ちてしまった。
 


 
 そして、その人間はその様子を一瞥、「ふむ」と呟いて頷き、刀を振って血糊を払ってから、刀を鞘に戻した。

「とりあえず……一つめの作戦は成功だな。後は……」

 と、言いきる前に気配と物音を聞きとり、聞こえた方向、自分の背後の木々に目線を向けた。

「おお—い。クロト—!無事か—い?」

 という、緊張感がどこか抜けた声が聞こえた。