複雑・ファジー小説
- Re: 黒ウサギ×銀色蝶々 ( No.4 )
- 日時: 2011/10/19 00:30
- 名前: 白月 (ID: P6IPfdWt)
「…………」
あまりの緊張感の無さに、クロトと呼ばれた少年は呆れてものも言えず、こめかみを押さえて思わず大きなため息をつく。
「なんでため息なんかするのさー大体、無事かどうかっていうことぐらいには返事してよね。こういう依頼は危険で」
と、文句の熱弁をふるっていた二十歳くらいの男にクロトと同じくらいの少女はもまた呆れた表情だった。
「リューラさん。クロト君のため息はあなたが仕事中にも関わらず能天気で楽観的だからですっ!」
「えぇ〜?結構真面目にやってるんだけど」
「嘘をつけ……」
少女は亜麻色の髪を振り乱しながら一喝するも、リューラと呼ばれた緋色の髪の毛の男はへらへらした笑顔で不思議そうに答える。
クロトはもはや呆れを通り越して諦めた表情だった。
しかし、依頼はまだ終わっていない。クロトは気を取り直して2人に向き直った。
「……で、首尾よくいったか?クレア、リューラ」
2人はそれにしっかりと頷いた。
「ん、巣で眠ってた魔物たちなら起こして引きつけておいたし、奴らの大好物のビーストキッドの死体もあるし、じき来るでしょ」
と、気楽そうに頭の後ろで腕を組んだ。
「……でも、いくらビーストキングの幼体だからと言って、よくあんなにも簡単に倒せちゃいましたよね」
と、クレアは感心したように言うと、クロトはそうか?と、当たり前のように言い放った。
ちなみに、ビーストキングとは魔物の中でも獣型に分類される魔物達の上位にいる魔物で、ビーストキッドはその子供である。
しかし、もちろん上位の魔物なので、倒すのは容易ではない。
「アレはまだかなり幼い方だ、倒せて当然だろう」
「……時々思うけど、クロたんって神経何本か抜けてて怖いよねぇ」
リューラは苦笑いしながらそう言った。
クレアも同じことを思ったらしく、うんうんと頷いていた。
————だが、クロトはそんなことを気にも留めず、刀を右腰に挿してある鞘からゆっくりと引きぬいた。
「そろそろ、来たようだな」
クロトの目の鋭さが増した。彼の高まる闘気を感じ取ったかのように刀がきらっと光った。
そして、リューラもナックルを装着した腕を構え、クレアは腰についていたポーチからナイフを取り出し、いつでも投げられるように構えた。
一瞬で緊張状態に陥ったその場は、恐ろしいほど静かだった。
『グギャアアアアッ!!』
そして、魔物がその場に踏み込んだ瞬間、悲鳴と鮮血が舞った。