複雑・ファジー小説

Re: 黒ウサギ×銀色蝶々 キャラ、アドバイス募集中です ( No.24 )
日時: 2011/10/31 21:35
名前: 白月 (ID: P6IPfdWt)

第4話『誘拐事件』





 
「な、なんでここに……」

 クロトは驚きのあまり数秒硬直。寝起きということもあってか全然頭が働かない。
 クロトの視線の先には————。

「あによ。いちゃけない?」

 こちらを無表情で見据る、サバ缶の中身を箸でつつきながら、ノートパソコンをいじっている銀髪の少女。
 

 ————エトワールがいた。今日は青い上下のジャージである。
 しかも、ここに100年も前から住んでますけど何か? という堂々とした雰囲気で居座っている。
 今のセリフも至極当然のようで、ここまで当たり前のように振舞われると、クロトは呆れを通り越していっそ清々しいとさえ思えてくる。
 と、リューラがクロトに今気がついたように振り向いた。

「あ、クロたん。グッモーニン!」

 そうクロトに言ってからリューラが、突然怪訝な表情になる。

「どったのクロたん。その溶けかけたチョコレートみたいなだらしない顔」

「どんな比喩の仕方だ。……例の、夢を見た」

 クロトはそんな顔の指摘をされたが何となく自覚があるため、苦笑しつつ言う。
 すると、リューラは「ああ〜」と軽い調子で答える。

「昔からよく見るあれ?」

 そう言われてクロトは頷く。
 精神的に不安定になるとよく見る夢。
 だが、ギルドの仕事なんてやっていると、特にクロトみたいな戦闘要員の場合、魔物討伐など生々しい仕事も多く結構精神的に来る。
 昔は最高で3日連続で見たことさえある。
 しかし、そんな仕事も慣れればただの仕事であって、最近では見ることも少なくなっていた。

「まぁ、別に普段の生活に支障をきたさなければそれでいい」

 なんてことを言ったりしているクロトだが、実はひそかにこの夢に自分の記憶をたどるカギが——なんてことを思っていたり。

「あっそ。心配になったら精神病院行きなさいよ」

 が、そんなクロトの思い知ってか知らずか、エトワールはしれっともっともなことを言った。
 それに、クロトは腕組みし、思案顔になる。

「むぅ……考えておくか」

「そこ、受け止めて考えちゃうんだ」

 リューラにそうツッコまれるが無視。
 正直にいえばもう何年も前に行ったのだが、定期的に行った方がいいかもしれない。
 ……と、クロトが考えているとだった。

「あ、ちょっと2人とも。こっち来て」

 ノートパソコンの画面を見つめているエトワールから急に声がかかった。

「どうした?」

 近寄ってノートパソコンの画面を覗き込み、リューラも同じように覗き込んできた。
 すると、サイトの1つのトピックに“蝶の誘拐事件またまた発生!”というものがあり、それを指さしていた。
 
 『蝶』とはシャングリラで生まれ、この世界のずっと昔に存在したとされる人々なのだが、1000年くらい昔の話で、もう存在していないと言われている。
 その代わり、蝶と交わったことのある一族。通称『蝶家』は時々色濃く蝶の血を継いだ者がその能力と特徴である金色の羽をもって生まれてくる。
 その色濃く血を受け継いだ者を今では、『蝶』と呼び、一族の繁栄の象徴とされている。
 
「別にそう珍しい事でもないけどねぇ」

 と、リューラがのんびりと呟く。
 そうなのだ。蝶家は規模が違えどどこも繁栄していて、この世の多くの大財閥も大体が蝶家。
 だから、その繁栄の象徴の蝶たちは何かと誘拐されたりすることが多い。
 だが、エトワールはリューラの発言に対し「違う違う」とそれに首を横に振った。

「この事件、あんたらにも結構かかわってくるかもよ? ……それに、なんかおかしいの」

 そういいながら、ノートパソコンを操作するとそのトピックを開いた。
 そこには、“蝶連続誘拐事件。警察の必死の捜索も叶わずまたもやもう1人犠牲者が!”という見出し。
 その下には被害者の写真と名前があり、様々な財閥、富豪の名字がずらりと並んでいた。
 その中の一つに、リューラが反応した。

「あ、ファリドア家も被害にあってるんだ。……まずいなこれは」

「ファリドア家ってあのギルドを支持してて、資金援助までしてくれている?」

「そ、しかもかなりの額くれてるところだから資金源減って、経営苦しくなるね。このままだと」

「それだけじゃないわ」

 と、エトワールが新しい被害のところを指さす。

「大財閥シャリック家。ここもギルド支持派。しかもこの家もギルドの大事な資金源。実はここ最近、ギルドの支援をしている蝶家の蝶たちが立て続けに誘拐されてる。偶然だと思う?」

 確かに、偶然とは思えない。が、断定的な証拠はない。
 
そして、そのまま被害者欄を見ていくと、何かをを見つけたクロトが急に目を見開いた。

「ユーリ・フェルーカとティアリア・ルービット……!? うちのギルドメンバーじゃないか!」

 クロトのその叫び声に、その場は一気に静まり返った。