複雑・ファジー小説

Re: 黒ウサギ×銀色蝶々 キャラ、アドバイス募集中です ( No.28 )
日時: 2011/11/04 21:50
名前: 白月 (ID: P6IPfdWt)

 それでも、俺は。

「仲間を、助けたいんだ。どんな責任だって取ってやる! だから!」

 力を、力を貸してくれっ——!
 クロトは藁にもすがる思いだった。

「そう。じゃあ、前払いとして2万ね」

「高いな!」

 たった今まで重い話をしていたのに、あっさりとそう言ったエトワールについツッコみつつ、お金を保管している金庫から2万クランを取り出し渡す。

「というかだいたい、そんな重い話をしていたくせになんでそうまぁあっさりと!」

 クロトが指摘すると、エトワールはめんどくさそうにため息一つ。

「未来有望な若者への計らいですー 今のご時世ちょっと変なことに首つっこむだけでも危ないしー」

 それはもう、取ってつけたような。というかリューラの言っていたことそのまんま。
 しかも、棒読みでそのようなことを言ってくれるのだから本意ではないことはバレバレで、しかも無表情ときた。
 そうなれば無性に腹が立つ。仲間を誘拐されて憤りを覚えていることもあるのだから、なおさらだ。
 クロトが思ったことを言おうと、口を開きかけた時だった。

「……まぁ、今の言い方は冗談半分に聞こえただろうけど本当の事。でも、からかったのもまた事実。悪かったわ」

 エトワールが素直に自らそう言ったのだから、クロトはなにも言えなくなり、口をつぐんだ。
 ……結果。なんとなくどよんとした空気になり、気まずくなってしまった。

「ま、まぁ、エトワールちゃんは多分、同年代の子の対応の仕方が分からなかったんだよ。いつも大人と仕事の話ばっかしてそうだし」

 リューラがこの空気に耐え切れなくなったかのように、この状況をどうにかしようと、口をはさむ。
 しかし、その言葉が何となくクロトに刺さった。
 クロトもクロトでギルドで大人と仕事の話なんてしょっちゅうで、エトワールは情報を売って食べていく情報屋。
 クロトはまだ気心が知れた仲間とそういう話をするからいいかもしれないが、エトワールは得体の知れない連中とそういう話をするのだ。どんなことに首を突っ込むか分かった物ではない。
 ……そう思うと、何となくすまない気持ちになってくる。

「……すまない」

「別に。気にしてないから」

 エトワールは関心がなさそうに適当に答える。

「……なんか、僕もごめんね。フォローのつもりで言ったんだけど」

「別にいいわ。それより家帰って仕事しないと。あんたらの仲間がどうなるか分かった物じゃないわよ?」

 リューラも自分の言った言葉の意味をとっさに感じたように謝ったが……エトワールはいつもの無表情で気にするそぶりも見せなかった。
 むしろ、立ちあがって仕事をすると言うくらいだ。
 何となく沈んでいた気持ちが軽くなった。

「そうだな……さっさと情報をつかんで助けに行くか」

「うん。そうだねーじゃ、早く身支度整えないと」

 リューラがそう言うと「あ……」とクロトが思い出したように、自分の身なりを見る。
 いつもの服と変わらず黒いことには変わりはないが、ラフなシャツと半ズボン姿である。
 ……これはまずい。
 クロトはものすごい勢いで居間から出ていき、自分の部屋へと向かった。

「あいつ……仲間の事となると、自分の事さえ忘れてしまうのね。起きたばっかりで朝食だって食べていないでしょうに」

「うん、そうだねぇ。それがクロたんの良いところだから。まぁ、悪いところでもあるけれど」

 そう返しリューラは微笑ましそうに頬を緩ませた。

「……やっぱり、時間がたっても性根は変わらないものね………」

 唐突にエトワールがどれにも分からぬような小声で呟いた。……どこか、悲しそうな表情で。
















 そしてその後、クロトが驚異的な速さで身支度を整えると、リューラの作ったサンドイッチを頬張りながら、エトワールの家へ向かった。

 そして、彼女の家に着いたのだが。

「うーわー……こんな家見たことないよ?」

 ……だろうな。
 リューラが最初に来たクロトと同じような反応をした。
 見わたせば機械、機材の山。床にはのたうちまわるコード。壁一面には沢山のモニター。生活用品があまりなく、相変わらずの非常識空間である。
 しかし、この非常識空間の主、エトワールはその発言に不服に思ったらしく、「文句あんの? 情報欲しくないの?」と言ってきたのでこれ以上言うのはまずいだろう。

「まぁ、大抵の輩が同じような反応を示すからいいわ。普通に考えたらびっくりするだろうし」

 びっくりなんて言葉ですむのか!?
 思わず口に出しそうになったが、あわてて口をつぐんだ。

「じゃあ、始めるとしますか」

 エトワールが言いながらパソコンの電源を入れると、周りの機械や機材が奪われていた命を得たかのように動き始めた。