複雑・ファジー小説
- Re: 黒ウサギ×銀色蝶々 ( No.5 )
- 日時: 2011/10/21 00:12
- 名前: 白月 (ID: P6IPfdWt)
鮮血が飛び散ったのが合図だったかのように、数十もの魔物達が一斉に襲いかかって来た。
ちなみに、鮮血を飛び散らせたのはクロトだ。
今回の魔物は仲間意識の強い、狼系の魔物なため、もちろん一番最初に傷つけたクロトが標的になる。
つまり裏を返せば、彼、もといクロトはかなりの強者。ということになる。
「あれ……?」
不意に、クレアが間の抜けた声を出した。
「どうしたクレア?」
クレアは「ええとですね……」と、どこか不味そうな表情でこう言った。
「あの……なんか、さっき引きつけてきたよりも、魔物の数が多い気が」
魔物の量が増えれば、多勢に無勢。いくら強くとも沢山来られれば勝率も低くなる。
そしてそれにリューラが軽く「ああ〜」と、今気付きました。というような声音で相槌を打つ。
「多分、他の魔物も起きたんじゃない?奴らの移動中にさ。それに他にもアレの肉が大好きな魔物はいっぱいいるし」
「まぁ、いくら増えようとも同じこと。所詮は雑魚の集まりだ」
そう言い捨てると、クレアの心配もよそに自分から大群に突入していく。
そして勢いそのままに、一気に目の前にいた二匹切り捨て、次に飛びかかってくる魔物達も一太刀浴びせるだけで真っ二つになって地面に崩れ落ちる。
と、情け無用と言わんばかりに、次々に魔物達を切り倒していく。
そして、リューラも地面を蹴って走り始める寸前、クレアに
「まークロたんの強さは伊達じゃないから心配しなくてもいいでしょ。勝てる自信がなきゃ自分から牽制なんて引き受けないだろうし」
そう言ってお茶目にウインク。そしてクロトの手助けに行くためにリューラは地面を蹴り、ものすごい勢いで走り去って行く。
クレアは確かにそうですね……と、思いつつ攻撃力を上げるサポート系の魔法の詠唱に入った。
それから数十分————彼らの周りには魔物の死体がたくさん転がっていた。
目立った外傷もなく、彼らが勝ったということはあからさまである。
「……はぁはぁ、クロト君は本当に、強いん、ですね……」
と、肩で呼吸しながらクレアがにっこりして言った。
だが、クロトはそんなことはない。と思って首を横に振った。
「クレアが、サポートしてくれなかったら、これくらいの傷では、済まなかったろう。まさに、多勢に無勢だ。ありがとう」
微笑みながらそう言われてクレアは顔を赤くした。
息が上がっていることもあるが、同年代の男子に言われると、何となく照れてしまうものである。
しかし、そこでリューラが不服そうな声を上げる。
「クロたん。僕への、感謝の言葉は〜?」
「クロトだ。その呼び方やめないと感謝の言葉なんて言ってやらんぞ」
クロトは本当に嫌そうなのだが、リューラは「親愛の呼び方だからヤダ」の一言で、クロトの意見をバッサリ切る。
そして、クロトは息を整えると、二つ折りの端末をズボンのポケットから取り出した。
————携帯電話だ————を、ギルド本部の番号にかけ「魔物討伐の依頼、完了した」など、
短い報告をして通話を切ると、携帯電話をポケットにしまいこみながら、戦いの疲労で地面にへたり込んでいた2人に、立てるか?と、訊くと、2人とも頷き地面からゆっくりと立ち上がった。
「日もすっかり暮れてしまったし、どこかで食べるか」
「あ!だったら私、美味しいとこ知ってますよ?」
「じゃあ、クレアのおごりってことで!」
「何でそうなるんですっ」
勝手に決め付けられ、クレアが声を荒げる。
「だが、その前に風呂だ。こんな血まみれじゃ店に上がらせてももらえないだろう」
まぁまぁ、といった感じで二人が言い争いになる前に話を切り替える。この2人は良い争いになると色々面倒で、クロトはそれを何度か止めたことがあるのだが、そのあとのストレスが半端ないのだ。
で、風呂の件については2人とも「確かに」と頷いた。
先ほどの戦闘で、返り血を浴びて服が血まみれになっていたのだ。
ぺちゃくちゃしゃべりながら帰路についていく3人を見ている、どこか不自然な鳥がいた。
と、3人が森の中に消えていくと、もう、様が済んだようにどこかへと飛び去って行った。
————薄暗い部屋に、少女が1人いた。
彼女はパソコンをの画面を覗き込みながら、
世界の何もかもににも無関心そうな表情で、こう呟いた。
「ふぅん、なるほどねぇ……」
と、
10月21日修正