複雑・ファジー小説

Re: 時雨の刀 第一部 ( No.13 )
日時: 2011/11/03 11:08
名前: Sky  ◆M7x9jXIufw (ID: x/gr.YmB)

「おいっ!!」

鈍い音が少女の部屋に響く。藤堂が振り返ると、刀を持った細身の男が歯を食いしばりながらもこちらを見ていた。
腹部には朱に染まった布と男の体、男はニヤリと笑みを浮かべると大声で少女に叫んだ。

「命令だ!!そいつを殺せェ!」
「……っ!?」

男の言葉に藤堂が振り返ると、今まで動かなかった少女が素早い手つきで藤堂の納めていた鞘から強制的に刀を抜き取り振りかざし、藤堂は真横に飛ぶ。
それを見つめているガラスの玉の様な瞳の少女は、刀を構えている。
しかし、構え方は日本法の構え方ではなく腰を低くし両手を使い構える西洋の構え方であった。
それを見た藤堂は、この少女は日本の者では無い事を理解すると同時に腰を屈め、拳を握って少女の刀を持つ手首を叩く。
勿論、少女は刀を振らずに刀を落とすと同時に藤堂に後頭部を打たれて気絶した。

それを唖然としてみる男に、藤堂は少女を抱えながら切り掛かる。

「うぎゃぁぁぁ!!」

男の鈍く響く悲鳴と共に溢れ出る鮮血、そして男はその場に倒れ込む。
藤堂は刀を鋭く鞘に仕舞い、抱える少女を見て呟く。

「こいつ…この男の命令を聴くだけの人形か…」

それだけ呟くと藤堂はその部屋を少女を抱えて出て行った。
そしてこの夜に響いたのは刃の音と志士共の怯えた悲鳴だけだったーー。
幼くも美しい顔立ちを持つ少女は、藤堂の腕に抱えられながら新たな人生の旋律を奏でられていたーーーー。


【第一部】 名を無くした少女と新選組 
『一話』 美しき少女は外国の娘ーー終幕ー