複雑・ファジー小説

Re: 時雨の刀【コメント欲しい!!】 ( No.40 )
日時: 2012/03/18 15:56
名前: Sky ◆QS1u8UNLHM (ID: qTh1yy9a)

それ以来時雨は時節過去の夢を見るようになり、その度に隊士に心配されたが「大丈夫です」と言い切っていた。
ある日、梅雨が恵みの雨として土を潤していた。そんな中時雨は一人巡察ではなく散歩に自ら希望して散歩に出ていた、うっそうとしげる茂みの中に入り森の中で自然の鼓動に耳を澄ませる。
これは時雨の唯一の趣味というべきモノだ。
我ながらおかしな趣味だと思うが、自然の中にとけ込んで行く感覚が時雨にとって心地良いものだった。

ある程度耳を澄ませて帰ろうと思った時足に、コツッ…と何かが足に当たった。
それは血錆びれた刀だった。雨に濡れても落ちないこびりついた血錆び、その刀を時雨はしばらく見つめて

「貴方にも心が無い」

「そうよね」と言って時雨は刀を持って錆びれた部分を自分の頬に当てた。そしてその刀を持ち主をも見つけた。
真っ赤に染まり、ぴくりとも動かなくなってしまった志士の姿。
その志士を見てから時雨は、その場を去った。

血錆びれた刀を携えて。


【第一部】 名を無くした少女と新選組 
  『四話』夢の中でーー終幕ーー