複雑・ファジー小説
- Re: オオカミと嘘吐き姫。 ( No.2 )
- 日時: 2011/10/19 15:26
- 名前: ぬこ ◆xEZFdUOczc (ID: DVd8EX6H)
プロローグ
イリアス王国に古くからある言い伝え。
その話は人々の心に強く根付き、人々は“嘘を吐く”ことを恐れた。
オオカミと嘘吐き姫。
それがその言い伝えのタイトルだ。
内容はこうだ。
『昔、この国を治めていたお姫様は、国の財産状況が危機に陥ったことで、とても悩んでいました。
王宮のお金も、食べ物も底が見えてきているし、国民達も「給料が減った」、「食べ物が無い」と嘆いています。
このままでは国が、王族が責められることになるでしょう。
「国の政治はどうなっているんだ」「何故国は私達を助けない」。
そうなることがお姫様には解っていたのです。
そして、それを一番に恐れた。
その恐怖が生み出した嘘が、自分の首を絞めたのです。
「この国の財産は大変安定しています」。そう、大嘘を吐きました。
明らかにこれは嘘だと、もちろん国民はお姫様に言います。
財産が安定していれば自分達が飢えに苦しむ事など無いのですから。
国民の前で大嘘は吐いてしまったし、その嘘もすぐにばれ、国民が怒ってしまった。
お姫様はその夜、自室で自らの過ちを大変悔やみました。
ああ、私は何てことをしてしまったのだろう。と。
そんなお姫様に近づいたのが、オオカミだったのです。
オオカミはお姫様の自室に忍び込み、お姫様を何処かに連れ去りました。
その様子を一人の大臣が目撃したと言います。
後日、王宮に届けられたのはお姫様では無く、黒いリンゴとメモでした。
そのメモには血のようなインクで「ご馳走様でした」と書かれていたといいます。
その話はたちまち国中に伝わり、嘘を吐くとオオカミに食べられると人々は恐れました』。
この言い伝えにより、人々が嘘を吐くことは無かった。
もしも嘘など吐こうものなら、オオカミに食べられてしまうから。
しかしそんな中、嘘を吐いてしまった一人の少女がいた—。